異世界生活180日目
ゆっけがリーダーとなり、異世界バスは変わった。その可愛さもそうだったが、ぼっちに掛ける情熱が凄まじく、乗客達全員がゆっけの友達となるべく頑張ったのだ。その労力は半端ではなかった。
「ゆっけさん、お菓子食べる?」
「ん、ありがと」
女性はお菓子作戦でゆっけのハートを射止めた。男性達はゆっけにゲームソフトをプレゼントして友達となった。ゆっけの回りにはいつもプレゼントが山積みだ。それと言うのもゆっけの能力だ。神速で行動するという力が凄すぎた。目にも見えない速さで移動し、目にも見えない速度で敵を切り裂き、ほとんどの敵を倒す。ボクサーマサムネ、ダンサーリュウセイ、空手家次郎は他の乗客めがけてやってくる敵を倒すだけで済んでいた。ほとんどゆっけの働きで倒していた。
「大変だ。ゆっけさんの攻撃でも倒せないタフなボスがいるぞ」
だが、その日は違った。ゆっけが100回斬りつけても倒れない敵がいた。超大型のトロールだ。どうやら探索範囲を広げすぎて、山の主と当たってしまったらしい。主力のスポーツマン達も戦いに加わるがダメージを与えてもすぐに再生されてしまう。
「く……ゆっけさん逃げますか?」
「私だけなら逃げ切れるけど皆が。私が囮になるから皆は逃げて」
ゆっけひとりが残り仁王立ちする。トロールの攻撃。神速で避けて地面に突き刺さった拳を神速で斬りつける。だが、その無数の攻撃も一瞬で再生されてしまう。だが、背後から何者かが大剣を高く飛翔しながら振り下ろした。ゆっけが何度斬っても倒せなかったトロールを一刀両断にした。
「ゆっけ久しぶりだな」
「モブ太郎! 半年ぶり!」
ゆっけが太郎に抱きついた。
「モブ太郎。私達にはやっぱりあんたが必要よ。戻ってきて」
太郎はゆっくりと首を横に振ると優しくゆっけを引き離す。
「ごめん。鈴さんの元を離れられない。わかっているだろう。だが、俺達にはガイルがいる。危ない時にはまた駆けつける。それじゃあ、またな」
山田太郎は異空間に戻ると、ゆっくりと異空間が閉じられていく。
「太郎のバーカ! 鈴さんの事ばっかり……」
ゆっけは泣いていた。しくしくと泣き続け、静かになったので異世界バスの乗客達が戻ってきた。
「ゆっけさん、やっぱり俺達バカだから戻って来ちゃいました。あ、倒せてる。さすがゆっけさん」
「違うよ。モブ太郎が久しぶりに現れて倒して行ったの」
バスの乗客達は伝説の太郎はやはり凄いと再認識する事となった。
「やはり太郎さんは凄いですね。僕達も鈴さん復活の為に薬草探しませんか?」
「ん、いいね! あのバカの為に力を貸してくれるの?」
「ええ、もちろん。でもバカって」
「いいのよ。私を選ばなかったモブ太郎はバカと言われてもいいの」
「そうですか。確かにゆっけさんもいい女ですものね」
「そうでしょう。むふー」
こうして、異世界バスの乗客も薬草を探す事となり、錬金術師の所には薬草が溢れた。それを錬金術から聞いた太郎は大いに喜んだ。




