異世界生活18日目
山田太郎は鈴の体を癒す為の薬草を探して世界の果てにいた。魔王軍の領地だ。貴重な薬草を登山用のリュックにしまい、立ち去ろうとしていた。そこに魔王軍が現れた。
「おい、人間貴様が噂の魔人斬りか。お前の命運もここまでだ。魔王軍2500人が相手だ」
「ガイル帰ろうか」
山田太郎は魔王軍2500人を無視して帰ろうとする。
「まあ、待てこの人間達に見覚えないか」
山田太郎は驚いた。なんとゆっけ達異世界バスの人達と、錬金術師のオリヴィアが捕まっているではないか。
「貴様ら! 命はいらないらしいな!」
山田太郎のネコ毛が逆立つ。全身を力がほとばしる。ガイルも無数のモンスターを呼び出し魔王軍と戦わせた。太郎は大剣を振り回す。ひと振りで10体の魔族を叩き斬る。魔力には強い魔人達も太郎の無属性の重たい斬撃には耐えられないようだ。更に太郎の魔法石には秘密があり、振れば振るほど、倒せば倒すほど威力が増すのだ。一心不乱に斬り進み、ゆっけに声を掛ける。
「ゆっけ大丈夫か!」
「モブ太郎……私はもう……ダメみたい……ガイルと逃げて」
十字架に貼り付けにされたゆっけを救いだし、抱き寄せる。体が冷たい。生命力が弱っていて今にも消えてしまいそうだ。
「嘘だ。ゆっけは俺より強くてこの程度では死なない筈だ!」
「それは半年前の話よ……今はあんたの方が……かはっ!」
ゆっけは話の途中で吐血した。太郎は両目から涙を流し、ゆっけを抱きしめる。
「バカめが! 隙だらけだ!」
魔王軍が太郎とゆっけを取り囲む。武器を一斉に振り上げ、そして振り下ろした。
「太郎! ゆっけ!」
ガイルが救出に向かうが間に合わない。その時、太郎が強く輝き出した。徐々に光が強まり、まるで太陽のように輝きを増すと、山田太郎と異世界バスの乗客は消えていた。
「何事だ。太郎達の生命反応が消えた。だが、存在反応はある!」
ガイルは異世界を超速度で移動し、太郎達のいる場所まで追跡した。異空間から出ると、太郎がゆっけの体を触って傷を癒している場面に出会った。これはおかしい。アザゼルの首が切られた死体がある。更におかしいのが、太郎の能力はサイコキネシス。癒しの力ではない。だが、傷が癒えている。この二点の事から謎が解けた。山田太郎は時を移動したのだ。傷もそう。傷を受ける前の過去に戻しているのだ。だから治っているように見える。
ゆっけの体を傷つけられる前の過去まで戻し、太郎は足が動かなくなった直後の鈴に歩み寄る。
「鈴さんやっとだ。鈴さんの怪我を治す力を手に入れたよ。過去に戻す能力。これが鍵だったんだ。長かった。もう無理かと思った。今ようやく手に入れた」
「太郎くん足が動くよ。もうダメかと思った。けど変ね。太郎くんの顔つきと体つきが別人みたい」
「それはね、俺は半年後の未来からやって来たからなんだ。俺は過去に戻れる。だから鈴さんの怪我も治せたんだ」
「それなら俺の首も繋げろ!」
アザゼルの幽霊が現れた。
「邪魔するな! 今いい場面だろう。空気を読め!」
太郎は以前ガイルに貰った霊を斬る剣を使ってアザゼルの幽霊を真っ二つにした。
「ありがとう。半年後の太郎くん。ずいぶんと苦労を掛けたみたいね……私は再び歩けるようにして貰ったお礼に何をすればいい?」
太郎は真剣に悩む。3分ほど悩んでから答えた。
「どんな願い事でもいい?」
「ええ、もちろん」
鈴やゆっけ、異世界バスの乗客達は太郎の言葉を待った。彼はゆっくりと噛みしめるように言った。
「鈴さん、俺の子供を産んでくれ。結婚してほしい」
「あ、はい……でも、私はおばさんだけどいいの? ゆっけは若いし沢山子供も……あ……キスして口をふさぐとかズルい」
「モブ太郎め……いいもん。私は他にもいるもん。さあ、スポーツマン3人衆! 今日はデートするよ! 過去に戻った記念にね」
冴子達は太郎の祝福し、ゆっけはフラれてヤケになり、他の乗客達は拍手をしている。こうして、半年間の時間を戻った乗客達は太郎のハッピーエンドを見て大いに喜んだ。それからいつものように異世界バスに乗り込み、それぞれの家に戻って行った。半年前の自分の部屋に。とてもおかしな感覚だっただろう。死んでいた筈が半年前に戻ったのだから。魔王軍に捕まって思った。太郎達に頼らず助けるくらいの力を手に入れなければならないと。




