異世界生活1日目
バスから異世界に降りた山田太郎。深呼吸して、異世界の空気を確かめる。気のせいか現代の空気と匂いが違う気がした。
異世界は期待に違わず中世ヨーロッパのようだった。電線もバスも車も走ってなく、馬車が走っていた。
「さあ、行くよ。山田太郎くん。先ずは武器屋ね」
町を歩く山田太郎。牛のマークの看板の店があり、ベッドのような看板があった。その隣が武器のマークの看板。武器屋だ。
「よう、鈴いらっしゃい。冒険者を辞めたって聞いたが元気だったか?」
気さくに挨拶する武器屋。山田太郎は何を言ってるのか全くわからなかったが、挨拶している事はわかった。
「うん。元気だよ。最近は商売ばかりしているの」
商売といってもネットで株の取引してたり、未来と過去の往復してる感じだけどね。と山田太郎に耳打ちする鈴。耳がゾクゾクして未来とか過去のワードは吹き飛んだ山田太郎なのだった。
「今日来たのは山田太郎くんを紹介する為なんだ」
「おう。鈴の紹介なら3割引で取引してやるよ」
「やったね、3割引だって」
鈴が喜んで山田太郎の肩を叩いた。
「じゃ今度は本屋に行きましょう」
武器屋の隣は本屋だった。カビ臭い店だったが、奧は花が生けられており、良い香りが漂っていた。客が来ても本を読むのを止めない眼鏡の店員。何故か現代の雑誌である少年サンダーを読んでいる。
「これはオーナー! お久しぶりです!」
どうやら鈴はこの本屋のオーナーのようだ。日本語が話せる店員らしい。
「これ頂戴」
鈴は異世界言語入門を店員に手渡す。
「ご自由にお持ち下さい。お金は結構です」
「いえ、お金は払うわ。だってプレゼントですもの」
鈴は店員に金貨20枚を手渡した。
「はい。これ」
鈴から本を受け取る山田太郎。著作伊達鈴と書いてある。鈴さんが作者やないかい!
と心の中でツッコミを入れる山田太郎。
「次はギルドね」
ギルドはとても大きな建物だった。中に入ると周囲がざわめいた。
「あの伝説の鈴さんよ。ドラゴンをひとりで倒したとか、味方を逃がす為に魔王軍をひとりで食い止めたとか!」
山田太郎は何を言ってるのかわからなかったが、ギルドの受付のお姉さんが興奮しているのはわかった。
「太郎くん。時間はいくら掛かっても構わないから、その本を使ってひとりで申請書を出しておいて。私はギルドのマスターと話をしてくる」
山田太郎は1時間ほど悪戦苦闘してようやく申請書を書き終えた。銅プレートのついた首飾りをギルドのお姉さんが手渡してくれた。
「鈴さん。為になる助言の数々ありがとうございました。あの若者の事ならお任せ下さい」
鈴の話も丁度終わったようだ。ギルドマスターと鈴さんが握手し、ついでに山田太郎も握手を求められた。何を言ってるのか全くわからなかったが、良さそうな人だった。それに強そうだ。
「次は錬金術師の所に行くわよ。あ、彼女にお土産買うの忘れてた。太郎くん先に行ってて。山のてっぺんの家だから!」
鈴は行ってしまった。仕方がないので太郎は山道を上がっていく。曲がりくねった道を登ると3匹のゴブリン達が現れた。槍を持ったゴブリンに、棍棒を持ったゴブリン、短剣と盾を持ったゴブリンだ。
槍を構えるゴブリン。脇腹にゾクゾクという感覚を感じた山田太郎。するとゴブリンが脇腹を狙って突いてきた。それをギリギリで避ける。
それは予測というより予感だった。それから5回連続で槍を突いてきたが、太郎は感覚でそれを連続で回避する。その動きでゴブリン達は本気になったのか、3匹でコンビネーションを使いながら休む暇なく攻撃を続ける。装備を取り出す隙もない。仕方なく一番取り出し易かった強力噴射のスプレーを取り出し、ゴブリンの目を目掛けて噴射した。それで動きを止めた間に武器を装備した。
反撃開始だ。特製の鉄線バットを槍ゴブリンの攻撃を横に避けると同時に踏み込みながら振り下ろす。グシャリという嫌な音がした。
「うわ、グロ。頭蓋骨が…」
カランと槍が地面に落ちる。それを足で立てて拾うと鉄線バットを地面に置いて両手で槍を構えた。先ほどのゴブリンのように5連続で突き繰り出してみた。見事に最後のひと突きをのどにヒットさせ倒した。
「よくも仲間をやってくれただぎゃ! 許さないだぎゃ!」
「うわ、日本語を話した!?」
「ごめんなさい。お菓子あげるから許して下さい」
山田太郎はブラックライトニングを手渡した。
「うみゃー! 嫁と娘にもほしいだぎゃ!」
「はい。どうぞ」
「俺とお前は今日から友達だぎゃ! あ、鈴だぎゃ! 久しぶり。まただぎゃー!」
日本語を話すゴブリンはどうやら鈴さんの知り合いらしい。お菓子をあげると喜んで去っていった。ブラックライトニングの力恐るべし。
「なかなか面白い戦いかたするじゃない。さ、錬金術師の家は、このすぐ先よ」
錬金術師の家に到着すると鈴がドアを無造作に開けた。
「あー! 鈴久しぶりー!」
錬金術師は両手を大きく広げたが近寄って来ない。
「私が行くのかい。相変わらず極度の面倒くさがりだね」
鈴と錬金術師が抱き合った。そして懐から鈴は本を手渡した。
「今日は頼みがあって来たんだ。この人を雇ってあげて」
鈴は錬金術師に頭を下げて頼んだ。
「ん、いいよ。鈴の紹介だから断れないでしょ」
「日本語!?」
太郎は二人の会話が日本語なので驚いた。
「そうよ。私は鈴に日本語教わって覚えたの。これからよろしくね。私はオリヴィア。あなたの名前は?」
「俺は山田太郎。よろしくお願いします」
挨拶が終わると、ぐーという音が聞こえた。どうやら錬金術師の腹の音らしい。
「鈴何か作って。面倒で3日食事してないの」
鈴は呆れて冷蔵庫の中を見る。見事に空だ。錬金術師の家にはソーラーパネルが3枚設置してあり、電化製品が使えるのだ。
面倒くさがりの錬金術師に現代の科学力は手放せない。無くてはならない物になっていた。
「何よ。冷蔵庫の中なにも入ってないじゃない」
「買い物行くのも面倒で…お茶しか飲んでないの…」
面倒くさがりの極みと言った所の錬金術師。
「食べ物なら持ってますよ。サンドイッチですが」
サンドイッチを手渡すと錬金術師はむさぼり食った。そして食べ終わると何度もお礼を言った。
「ありがとう。ありがとう…ありがとう! 死ぬかと持った。もうダメかと思った。死にたくないよー!」
なら、買い物に行けやと思ったが太郎は黙っていた。
「なら、買い物に行きなさいよね」
「金ならあるんだ。面倒なだけで」
大量の金貨や銀貨、銅貨が詰まった袋を出す錬金術師。
「太郎くん。帰りにやる事決まったね。帰りに換金所に寄って現代の紙幣に替えて、保存の効くもの沢山買ってきてあげて。カップ麺とか、スープの粉末とか」
「はい。ハチミツも大切ですね。工夫して買い物してみるよ」
こうして、換金所に行き、鈴の異世界案内ツアーは終わった。明日から太郎がひとりで行動する事になる。
「なかなか楽しかったよ。最後は酒でも飲んでバスを待とうか」
酒場で色々なオススメ料理を教わって酒を飲んだ。料理がとても美味しくて酒が進みに進んだ。バスが来たと鈴が言って二人はバスに乗り込んだ。




