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79,さて、どうなっているかな

 ガルダの装飾品工房を二日三日ほどかけて巡り、そろそろガルダを後にしようかという話しになった。

 その前にもう一か所行きたいところがあるので、今日はアジサシ全員で馬車ごとガルダ内を移動している。


 草原などを走っている時とは違い速度が出せないので程々に遠くはあるが、道はしっかり広めの道が整備されているので、苦労はせずに到着した。

 目的地はクリソベリルの本拠地だ。いつぞやここに送り届けたろっくんの周囲もそろそろ落ち着いたことだろう、ということで、様子を見に来たのである。


 チグサが代表して馬車を降りて扉のノッカーを叩くと、すぐに人が出てきた。

 こちらの目的も分かっているのか馬車が敷地内に入れるように門を開けて、少し待っていてくれとだけ言って建物の奥へと走っていく。


「さて、どうなっているかな」

「子供の成長は早いからなぁ」


 器用に馬車を敷地内に入れて、ついでに方向転換までしているカタリナを眺めつつ、チグサはアンドレイと共にのんびりとろっくんの事を思い出していた。

 数日しか共に過ごしていないとはいえ、まだそれほど時間も経っていないのでしっかり思い出せる。


 それほど幼くはない少年だけれど、まだまだ成長期。しっかり食事を食べて運動をしていたら、見違えるほどに成長している事だろう。

 劇的な変化が起こっていてもおかしくはないというか、恐らく起こっているはずだ。数か月あれば子供は育つものである。


「おーい、連れてきたよぉ~」

「久しぶり!」

「おぉ、ろっくん。やっぱりでっかくなってる」

「背ぇ伸びたな」


 玄関で対応してくれたクリソベリルメンバー、ブランがろっくんを連れて戻ってきた。

 ちょうど馬車も方向転換を終えて停止したので、馬車からも人が降りてきてろっくんを取り囲む。

 背も伸びたが、表情が何よりも変わった。静かにこちらの様子を窺っていた、怯えるような視線はもう既に無く、まっすぐに見てくる目には生き生きとした光が宿っていた。


「そういえば、名前はどうなったんだい?」

「ロードライト。……どんな石かは、知らないけど」

「ガーネットの一種だよ。ちょっと紫っぽい赤い宝石」

「そうかい、じゃあ、ろっくんはろっくんなんだね」


 そうなるようにクリソベリル側が選んだのかもしれない。

 ともかく、アジサシからの呼び名はろっくんのまま変わらなさそうだ。


「ここでの暮らしはどうだい」

「今はとにかく体力つけろって、一日中走らされてる。それに魔法の練習も始まって、毎日死にそう。……でも、温かいご飯が食べきれないくらい出て来て、お湯で体を洗えて、硬くも寒くもないベッドで寝てるよ」

「充実しているみたいで何よりだよ」


 クリソベリルは揃いも揃ってスパルタなので、戸惑ったりしている余裕もなく過ごしていたのだろう。

 そうして、一日を振り返れるくらいに余裕が出来てきたときにはそれが当たり前になっているのだ。食事も睡眠も遠慮なんてしていられない環境なので、強制的に慣れるというわけである。


「ろっくんはどう育てるんだい?魔法使い?」

「魔法剣士かなぁ、本人が剣に興味あるらしいし」


 ろっくんがセダムとエリオットの方へ行ったので、その背中を見つつチグサはブランにろっくんの教育方針を訪ねる。

 クリソベリルで魔法一本でやっていくほどの魔法適性は無かった、という事なのだろう。

 まあ、本人がやる気のある方向へ伸ばすのがクリソベリル流なので、魔法を強く望んでいたらどうにか出来るだけの技術を身に付けさせたのだろうけれど……


「そういえば、うちの馬車に乗っていた時もエリオットとコリンの事をたまに目で追ってたな……なるほど、元々剣には興味があったんだね」

「どんな剣を使うかはまだ分かんないけどねぇ」


 なんて言ってほけほけ笑うブランに思わず苦笑いを溢す。

 確かにクリソベリルは妙な武器を使う者も多いので、ろっくんがその一員となる可能性はそこそこ高いのだ。


 これからどう育つのやら。楽しみにしているのはチグサだけではないだろう。

 クリソベリルに連れてきた時点で普通の冒険者に育たないことは確定しているようなものなので、予想がつかず非常に楽しみである。


「というか、そういえば今回ってなにしに来たの?ろっくん見に来ただけ?」

「いや、ミュアザーエフラワーを卸しにね。かなりの量が取れたんだ」

「へぇ……まだある?ちょっとほしい」

「あるよ、出してこようか」


 ここから更に加工する前提でそういった工房に売りに行っているが、ミュアザーエフラワーはそのままでも十分に綺麗だ。

 なので、こうして欲しがる知り合いがいたら普通に売る。クリソベリルの面々は値段を理由に購入を中断したりもしないので、特にそのあたりも言及せず馬車から在庫を出してきた。


「そのままでいいかい?」

「んー、一緒にリボンも買おうかなぁ」

「レウコース、花束作ってー」

「はいはい」


 十本ほどのミュアザーエフラワーをレースで包んでリボンを巻けば、それだけで十分立派な装飾である。これだけでかなりの値段にはなるが、それだけの価値はあるだろう。

 と、そんなことをやっていたらろっくんはコリンとじゃれ合い始めていた。まだまだコリンの方が上だけれど、これも今後に期待だ。

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