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73,逃げるほどじゃないね

 第四大陸から第三大陸へ移動し、村などを巡りながら第二大陸を目指す。

 のんびりとした行商はいつも通り平和で、いっそ暇なほど順調だった。

 いつものように屋根の上で昼寝に興じていたチグサは、なんか面白いこと起こらないかなーなどと考えながら第二大陸に入るまでの日数を数えていた。


 そんな暇を持て余したチグサの横にはセダムが寝転がっており、こちらも同様になんか手頃な魔物とか出てこねぇかなぁと考えている。

 平和なのは良い事なのだけれど、それでも暇なものは暇。そんな風に意見が合った二人は、しかし何もすることはないのでとりあえず寝転がっているのだ。


「団長、ガルダは寄らねぇの?」

「今行っても出来る事少ないしねぇ……行くなら帰りだね」

「そうか……にしても暇だな……」

「ここまで暇なのも中々珍しいねぇ……」


 時折こうして中身のない会話をするくらいしかすることのない二人は、見張り台のアンドレイが呆れた声を出しているのに気付きつつ、それを無視してその後も日暮れまで屋根で寝転がり続けた。

 何せ起きたところでアンドレイにやんややんやと文句を言うしかすることが無いので。そんなことをされてはアンドレイだって迷惑だろう、とさもそちらを気遣っているふりをしてのんびり無視しているのである。


 そんな風にダラダラ過ごして平和な草原を進み、日暮れが近くなってきたので本日の野営地を決めて馬車を止めた。

 サシャが夕食の支度のためにあれこれと道具を引っ張り出しているのを手伝って、自分たちが座る椅子などは各自好きな物を持っていく。


 そうして着々と野営の準備を整えていたところで、カタリナが何かに気付いたように視線を外に向けた。フードの下で耳がピンと立っているのが分かる。

 その様子を見て、まず動いたのはエリオットだった。


 慣れたように剣を手に取ってカタリナの横に移動し、カタリナが見ている方向を確認する。

 エリオットが動いたことでコリンも反応し、エリオットの横に並んだ。そのまま少しの間無言の間が空き、カタリナが一点を指さした。


「来る」

「何が来るかは見えるかい?」

「ん……でっかい。角ある、二本。四つ足。太め」

「色は?」

「……茶色?」

「キョロチかハヴァソゥかチトポマだな」

「どれであっても逃げるほどじゃないね、よし行けコリン!」

「はーい!!」


 ゴーサインを受けて元気よく駆けだしたコリンにため息を吐いて、チグサに文句を言いつつエリオットも駆けだす。

 二人に任せれば大丈夫だろう、と言いつつセダムも斧片手にゆったり歩き出した。必要があれば手助けを、そうでなくても倒した後の解体をするつもりなのだろう。


 昼間にあれだけ暇を持て余したので、軽く運動しに行った可能性もある。

 同じく暇を持て余していたチグサは基本戦闘では役に立たないので、この時間もすることはなくそこそこ離れたところで始まった遭遇戦を遠めに眺めることしかできない。結局暇だ。


「団長、暇ならこっち手伝って」

「はぁい。何をすればいいんだい?」

「野菜の皮むき」


 暇だなぁ、とぼんやり戦闘を眺めていたらサシャに声をかけられてので、言われた通りにナイフで野菜の皮をむいていく。

 この野菜たちは昨日立ち寄った村で購入した物なので、とても新鮮で瑞々しい。


 商品として積み込む食料はどうしても保存のきく乾燥した物が多くなるけれど、こういった新鮮な野菜なども買うことがある。主にアジサシの食料として、だ。

 要望があれば売ることもあるけれど、言われない限り出さないので基本売らない。売る前に食べきるのが常であり、買い込んだ後はこうして下処理のお手伝いに何人かが呼ばれることが多い。


「団長、考え事してないで次はこっちね」

「はぁい」


 野菜の皮むきを終えて再びぼんやりしていたらサシャが次の仕事を持ってきたので、大人しく受け取って作業に取り掛かる。

 アジサシ内で一番偉いのはチグサだけれど、行き先の決定権はカタリナが握っているし、食事関係に関してはサシャに逆らえる者は居ないのである。


 そんなことを考えながら下処理の手伝いをしていたら、討伐に行っていた三人が帰ってきた。

 無事怪我もなく討伐を終えたようで、討伐した魔獣を担いで持ってきている。

 ちょうどチグサが任されていた作業は終わったので、籠をサシャに渡してそちらに向かう。


「お疲れ様。なんだったんだい?」

「チトポマだ。そこまで素材は期待出来ねぇが、とりあえず解体するぞ」

「うん、お願い。……あぁ、なるほど。まだ育ち切ってないんだねぇ……角にも傷が多い。同族との争いに負けて追い出されてきたのかな」


 セダムが素材に期待できない、と言った理由を察しながら、解体の様子を見守る。

 見ていても特に不自然な部分は出てこないので、本当にただのチトポマだったのだろう。

 納得したところで観察をやめて、再びサシャの手伝いに戻ることにした。そろそろ夕食も出来るだろうから、配膳などやる事はあるだろう。


 特に普段、早く食べたいと張り切って手伝うコリンが今は戦闘後ということで軽く水浴びに行っているので、単純に手の数が足りないのだ。

 そんなわけで手伝いをして、全員揃ったところで夕食を食べることにした。

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