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72,上に転がしてきて

 薬屋・リコリスにしばらく留まり休息を楽しんだ後、アジサシは次の行先を決めて出発の準備をしていた。

 次に向かう先は第二大陸の外海側、海辺に広がる森のある一角だ。

 そこで何をするかといえば、いつも通り珍しい物を収集するのである。


 今回の目的は数年に一度だけ開花するとある花。

 過去の記録をあれこれ見返していたら、そろそろ咲く頃なのではないかということに気付いたので行ってみることにしたのだ。


 第二大陸のイツァムナー同盟諸国には正直まだ近付きたくないが、外海側の森のあたりならそう近付くわけでもないので良しとした。

 そんなわけで、ポーション類を買い込んで馬車に積み、馬たちに牽引用ハーネスをつけて出発準備を整えた。


「それじゃあまたね」

「はい!お気をつけてー!」


 見送りに出てきてくれたアオイと、アオイにピッタリくっついてこちらを見ているセルリアに手を振ってリコリスを後にする。

 アオイが作っていた薬については大分進んだらしいが、チグサは製薬については専門外なのでよく分からなかった。


 なので、あれこれと薬に使うものかは疑問が残る物を買い込んでいたアオイを眺めながら、最上位薬師まで行くと本当に工程が意味分からないなぁ、なんて考えただけで終わりである。

 セルリアに誘われて窓からアオイの作業を眺めた日もあったが、その日の感想もなにしてるか分からんなぁ、で終わりだった。ま、専門外の事なんてそんなもんだ。


「さて……じゃあ予定通り、陸路で第三大陸に入って村に寄りつつ向かおうか」

「あいー」


 第三大陸は久々、というほどでもない。アジサシはポーション類の仕入れを第三大陸のガルダにある薬屋・エキナセアと第四大陸の迷いの森にある薬屋・リコリスのみで行っているので、どうしてもこの二大陸での活動が多くなるのだ。


 どうせ来たならなんかしてから移動しようか、という思考回路で何かしらしてから移動しているので、用事はこまめに済まされている。

 今回はガルダには寄らない予定だけれど、どうせ遠くないうちに行くことになるだろう。


「うーん……アンドレイ?」

「なんだ?」

「今回モルモーには寄っていこうと思うんだけれど、何か特出して気を付けるべきことってあったかな?」

「モルモーなら特にはないだろうさ。しばらく魔物の大量出現やらの話も聞かないし、団長がむやみやたらに一人にならなきゃ問題はない」

「流石にボクも今回くらいは大人しくしてるさ」


 さらりと刺された釘に反抗しつつ、チグサは視線を手元のメモから窓の外へと動かした。

 話している間に馬車は迷いの森の上を通過し終えて、人気の少ない、視線の通りにくい一角に降りていくところだった。


 ゆっくりと下降した馬車が軟着地して、カタリナが御者台から降りて馬たちに近付いていった。

 馬にいつも通り魔力を抑えて毛色を替える足環をつけているカタリナをぼんやりと眺めて、チグサはあくびを一つ噛み殺した。リコリスにいる間は平和なのだが、チグサはずっと目の違和感を誤魔化して過ごしている。


 そのせいかは分からないが、リコリスにそこそこの期間滞在した後は目が疲労を訴えて勝手に閉じようとするので、それが眠気と勘違いされるのかやけに眠くなるのだ。

 この状態でおりていっても手伝うより邪魔になる、と過去の経験から知っているので、こうして馬車の中からぼんやり眺めるだけにしている。


「だんちょ、寝てくれば?」

「んー……眠い気がするだけで、実際寝れないんだよねぇ」


 ぼんやり眺めている間に手早く足環の装着を終えたカタリナが帰ってきて、御者台の傍でぼんやりしているチグサの髪の毛をちょろちょろ弄ってくる。

 くすぐったいその手から逃げつつ、再びあくびを噛み殺して目をこすった。


「エリー?」

「エリーはやめろって。どうした?」

「団長上に転がしてきて」

「おうよ」

「ちょ、分かった分かった、自分で動くから!」


 チグサに動くつもりがないと分かるが否やエリオットを召喚して強制連行しようとしてきたカタリナと、呼ばれて素直に近付いてきてチグサを持ち上げようとしているエリオットから逃げる。

 こうなった二人は止まらない。何せ、一連の流れが全て悪ノリなので。


 となればチグサに残された道はエリオットに強制連行されて上に転がされるか、自主的に上に転がりに行くかである。

 そんなもん選択肢はあってないようなものなので、さっさと立ち上がって二階へ続くはしごに向かった。


 床が少しだけ高くなっている部分に靴を脱いで上がり、適当なクッションを枕にして寝転がる。

 そうして目を閉じると、ブランケットがかけられた。話を聞いていた誰かしらが上がってきたのだろうな、なんて考えつつ、目を開けるのが億劫でそのままとりあえず礼だけ言っておく。


 案の定別に眠れはしなかったが、地上を走る馬車の振動を感じつつ目を閉じている時間は中々良い物だ。そのまましばらくぼんやりして過ごし、気付けばそこそこ時間が経っていた。

 呼ばれて起きればこうして寝転がる前よりも頭がすっきりとしていたので、必要な休憩だったのだろう。

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