集中と収集
甲高い絶叫が、室外で鳴り響いた。
幼い少女のものと思われる悲鳴。
隙間から挿入された血塗れの腕の動きが一瞬止まり、やがてするすると引っ込んで、ドアの向こうへ消えた。
「……。」
ナオは寝間着姿のまま、落ち着いて手早く身の回りの物をかき集めると、ドアの前に立ち、のぞき窓を覗いた。
誰もいない。
「…………。」
彼女はそっと、極力音を立てない様にして、ドアを開ける。
耳を澄まし、すっと鼻から息を吸い、周囲の状況を想像して予測する。
…微かに音がした。
ナニカがいる。
まるで何かを待ち構えているかの様に、静寂の中にポツンと立つ存在。
ナオはゆっくりとドアを閉じて、施錠した。
「マズイわね…。」
振り返り、自身の作業机に直行する。
ガラッと引き出しを開けると、そこにはありとあらゆる種類のナイフが収められていた。
「……。」
彼女は、手製のケースに収められたそれらを持ち上げ、注意深く吟味する。
やがて一つに目を留め、それを手にする。
「…ダガーで行くか…。」
そう呟き、ナオはその短いナイフを鞘から引き抜く。
漆黒の夜の色に塗られた、両刃の短剣。
何色にも染まる事のない、決意の証であるかの様だった。
出淵ナオは抜き身のナイフを片手に、玄関口へと向かう。
外ではあの、少女のものと思われる悲鳴が立て続けに、何度も上がっていた。
ナオはドアの鍵を開け、注意深くゆっくりとドアノブを…
「助けてぇぇぇ!」
「!」
頭から血を流した一人の若者が、無理やりにドアをこじ開け、乱入を試みて来た。
「助けてくれぇぇぇ!」
決死の形相の彼に、ナオは落ち着いて、こう告げた。
「しゃがんで。良いから。」
「!?」
そうして、若者の頭のあった場所に、深々とナイフを突き刺す。
一杯に開かれた口蓋の奥底に、黒色のダガーナイフが突き刺さる感覚がして、ナオの両肩が震えた。




