EP7 奴隷、オフに服を買う…と思ったら財布と心も破壊された
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
オフ日になり、俺はノアを連れて街へ出た。
大学もバイトもない、久しぶりの完全な休みだ。
せっかく時間があるのだから、溜まっていた用事を片付けるついでに、ノアの服も新調しようと思った。
「せっかくだし、服も買っておこう」
俺の提案に、ノアは軽く肩をすくめる。
「ご主人様、今ある服で十分です」
即答だった。
なるほど。どうやら彼とは、服に対する価値観そのものが違うらしい。
歩きながら、ふとノアの服装に目がいく。
ショートパンツに大きめのアウター。
肩が大胆に露出したトップスは、どれもコンカフェの客からもらった服だという。
色も形もバラバラで、普通ならちぐはぐに見えるはずなのに、不思議とノアが着ると様になっている。
風が吹くたび、金色の髪がさらりと揺れる。
人混みの中でも迷わず歩くその姿を見て、俺は思わず小さく呟いていた。
「……その格好で寒くないのか?」
「問題ありません」
即答だった。
暑さ寒さよりも、彼にとって重要なのは別の基準なのだろう。
最初に入った店で、俺は無難そうな服を手に取り、ノアに差し出す。
「これは?」
「……好みではありません」
次の店でも、結果は同じだった。
「これはどうだ?」
「好みではありません」
次も、その次も、ノアは淡々と首を振る。
機能性もデザインも悪くないはずなのに、彼は一切妥協しない。
正直、選ぶ側の俺の方が先に疲れてきた。
何軒目かの店で、ノアは不意に足を止めた。
「ご主人様、これにします」
差し出された商品を見て、俺は思わず固まる。
それは、かつて俺が初めてノアに渡した、あのボロボロのジャージとほとんど同じデザインの、ユニクロのスウェット上下セットだった。
「……それでいいのか?」
値段も安く、特別おしゃれでもない。
拍子抜けする俺に、ノアは袋を抱きしめ、満面の笑みを浮かべる。
「はい。これが一番落ち着きます」
その笑顔を見てしまえば、もう何も言えなかった。
家に帰ってから、ふと一つのことを思い出す。
最近、ノアが契約上の“体での奉仕”について、ほとんど口にしなくなっていることだ。
「そういえば……最近、その件言わなくなったけど、どうしたんだ?」
問いかけると、ノアは少し得意げに胸を張った。
「外で済ませています、ご主人様」
「……外で?」
嫌な予感と共に、脳裏に浮かぶのは、夜のコンカフェで働くノアの姿だった。
店の女の子たちに囲まれ、愛想よく笑い、客の心と財布を軽やかに掴んでいくあの光景。
どうやら今日も、破壊されるのは俺だけではないらしい。
そう思うと、なぜか少しだけ救われた気がした。
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作者:しけもく




