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EP6 給料も封筒もオーディションも全部奴隷のせい

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

 コンカフェ初日で盛大に散財した俺は、

 さすがに店へ通うのを控えるようになった。


 財布は軽い。

 心も軽くなりたい。

 現実は、ならない。


 なぜなら――

 ノアが、やけに余裕のある顔で生活していたからだ。


 気づくと、冷蔵庫の中身が増えている。

 菓子。

 飲み物。

 軽食。


「余ったので」

「常連さんが」


 そう言って、

 当然の顔で棚を埋めていく。


 そして、その隙間に紛れ込む銀色の小袋。

 例の非常食だ。


 差し入れと非常食が

 同じ段に並んでいる光景は、

 何度見ても理解を拒む。


「……お前」

「俺を差し入れと非常食で管理してないか?」


 俺はまず差し入れに手を伸ばし、

 どうにもならない日は、

 覚悟を決めて銀色の袋を開けた。


 噛むたびに、

 人生の判断を一つずつ誤ってきた気がする。


 生きているというより、

 静かに飼われている感覚だった。




 そんなある日。


 ノアが白い封筒を差し出してきた。


「今月の給料です。」


 受け取る。

 封筒の厚みで、嫌な予感がした。


 中を見る。

 声が出ない。


「……どうやって」


「常連が定着しました」

「指名と、ドリンクと、チェキです」


 業務報告の口調。


 俺のバイト代とは、

 住んでいる世界が違う。


 生活が一段階、

 静かに変わる額。


 呆然としていると、

 ノアが手を伸ばした。


「諸経費として」


 封筒の大半が消える。


「ちょっ――!」


 残りだけが、俺の前に戻された。


「奪うなよ……」


 言いながら、反射的にしまっている自分が情けない。


「それと」

「アイドルのスカウトが来ました」


「……は?」


「オーディションです」

「来週」


 頭が追いつかない。


 ノアは満足そうに頷いた。


「効率は良好です」


(頼むから)

(俺の心臓の耐久も考慮してくれ)




 しばらくして、ようやく言葉が出た。


「……服」

「買い替えた方がいいだろ」


「不要です」

「現状で問題ありません」


 生存効率最優先の回答。


「じゃあ」

「オフの日に一緒に行こう」


 一瞬だけ、ノアの表情が緩む。


「了解」


 その顔を見て、

 俺は確信した。


 この生活は、

 まだ本番じゃない。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

気に入っていただけましたら、評価やブックマークなどしていただけると励みになります。


作者:しけもく

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