株は何となく怖いので、奴隷がメイド服で働くことになった
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
冷蔵庫を開けた。
何もない。
正確に言うと、
期限の切れたマヨネーズと、
一本だけ残ったチューブわさびがあった。
「……終わってんな」
静かに閉めた。
現実は、
見すぎると心が壊れる。
財布を確認する。
軽い。
物理的にも、
精神的にも。
残高確認はやめた。
今日はもうダメージを受けすぎている。
背後で煙の匂いがした。
振り向く。
窓辺。
ノアがいつものようにタバコを吸っている。
金髪。
青い目。
俺のボロジャージ。
どう見ても女。
「生活費が不足していますね」
「分かってる」
「だからバイト探してんだよ」
ノアは煙を吐く。
「収入を増やす方法はいくつかあります」
嫌な予感しかしない。
「例えば」
「株は却下」
即答した。
「まだ言っていませんが」
「どうせ株かFXだろ」
「はい」
「怖い」
「仮想通貨は」
「もっと怖い」
「短期トレード」
「言葉が怖い」
ノアは少し考えた。
そして言う。
「では労働ですね」
「そう」
「人類が一番信用してるやつ」
「働いたら金が出る」
「素晴らしい制度だ」
ノアは頷いた。
「ではどこで働きますか」
俺は求人アプリを開く。
コンビニ。
居酒屋。
引っ越し。
時間が合わない。
大学。
講義。
課題。
人生は忙しい。
スクロールしていると、
ある求人が目に入った。
コンセプトカフェ。
男性向け。
制服かわいい。
時給高い。
「……女だったらな」
思わず呟く。
沈黙。
後ろから声がした。
「僕がやりますか?」
振り向く。
ノアがドヤ顔している。
「は?」
「合理的です」
「視覚的価値が高いです」
「集客力もあります」
「いや」
「お前」
「男だぞ」
「はい」
「奴隷だぞ」
「はい」
「ヤニカスだぞ」
「事実です」
否定しろよ。
ノアは真面目な顔で言った。
「ですが」
「女に見えると言われます」
……それは事実だった。
俺はスマホを見る。
時給。
かなり高い。
ノアを見る。
どう見ても女。
しかも美人。
「……」
冷蔵庫。
空。
財布。
空。
人生。
空。
俺は天井を見た。
そして言った。
「……やるか」
ノアは頷く。
「了解しました」
少し間を置いて、
こう続けた。
「ちなみに」
「店の売上構造ですが」
「おそらく利益率は――」
「まだ働いてねぇ!!」
こうして俺の生活費は、
奴隷の女装バイトに
託されることになった。
この時はまだ知らなかった。
この選択が、
俺の財布と精神を
どれだけ削ることになるのか。
そして、
この店が
俺の人生を大きく変えることになることも




