相棒よ……また会う日まで
レオンは瞬きを繰り返していた。
イヴとニコの後ろ姿を見つめていた。
チャイムが鳴り響くと、二人は居酒屋を出て行った。
「……これからのこと、か」
レオンは店員からジョッキを受け取りながら呟く。
ヒロが頬杖をつき、やや赤らんだ顔で口を開いた。
「レオン、お前だって他人事じゃないだろ」
「……俺はこれまでと変わらない」
「両方に派遣されるんだろ?」
「問題ない。これまでも他組織にも所属していたしな」
「そんなもんなのか?」
レオンは静かに頷き、ジョッキを傾けた。
「コイツもそうだったぞ」
レオンは親指で背後に転がる男を指差した。
「ノアも?義理の息子だろ?」
「今でこそアルヴァルトの側にいるが……まあ色々あったな」
「そうか」
ヒロは酒に酔いながらも、瞬時に深く聞かないことを選択した。
レオンは少しだけ身を乗り出した。
「……聞きたいか?」
「いい」
迷いのない即答にレオンは寂しそうに眉を下げた。
ユーミルがグラスに入った丸い氷を指で転がす。
「結局、僕たちも少しずつバラバラになっていくね……折角何年もかけて再集結したのにさ」
氷がグラスに当たり、高い音が鳴った。
「寂しいのか?」
レオンは小さく呟く。
「……君の妹ほどではないよ」
「……どういう意味だ!」
ユーミルはロックグラスを傾けた。
「レオンよりニコの方がまだ未来を考えてるってことさ」
レオンは眉を寄せ、手元のジョッキを一気に傾け空にした。
座卓にジョッキを強く置く。
「……分からん」
「おめぇはそのままで良いんだよ!」
マキシムはバシバシとレオンの背中を叩いた。
「俺と一緒に変わらずバカやってようぜ!」
「……ああ」
レオンは納得出来ないまま空返事をした。
沈黙が座敷を包む。
ヒロが周りを見回し、小さく息を吐いた。
「そろそろ帰るか……」
「二人寝ちまったしな」
マキシムは座卓に手を置き、ステラを見下ろす。
規則正しい寝息が聞こえる。
「誰が送るんだ?」
静まる部屋。
自然とハルトに視線が集まる。
「俺!?無理だから」
「いや、お前が飲ませたんだから責任取って送れよ」
マキシムの正論が突き刺さる。
ハルトは渋々、スマホでタクシーを呼んだ。
ハルトの背中に乗ったステラの口元は少しだけ緩んだ。
レオンにだけはそう見えていた。
「残りは……」
ジャケットを被ったまま丸くなる男。
ヒロが身体を揺する。
「おいっ、ノア!起きれるか?」
小さな呻き声。
「仕方ねえか……レオン、背中貸してくれ」
「背中で粗相だけは勘弁してくれよ……」
「自分でフラグ立てんな」
レオンはノアの前に腰を下ろした。
ノアは項垂れながら身体を起こそうとした。
その時──
レオンの視界には全てがスローモーションに見えていた。
ノアに貸したジャケットはレオン拘りの一着だった。
エイジングで出来た皺と色味。
共に過ごした日々が走馬灯のように流れていった。
そのジャケットが目の前で汚されていく。
レオンは目を見開いたまま、動けずにいた。
ヒロが慌ててノアの背中をさする。
「だから飲み過ぎだ!」
「すみません。雑巾をお願いします」
ユーミルの冷静な声が居酒屋に響いていた。




