裏のトップにお子様ランチ出すな
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
夜。
ノアが帰ってきたのは、かなり遅い時間だった。
玄関の扉が開く。
「ただいま」
その声と一緒に、ふわりと酒の匂いが流れ込んできた。
リビングにいたヒロが顔を上げる。
「やけに遅かったな」
ソファに座ったまま、じっとノアを見る。
「飲んできたのか?」
ノアは靴を脱ぎながら答えた。
「義父さんの付き合い」
「あー……」
ヒロはなんとも言えない顔になる。
だが次の瞬間、少しだけ笑った。
「だいぶ親らしくなってきたな」
その言葉に。
ノアはわずかに視線を逸らす。
つまらなそうな顔だった。
「……そうだね」
短く返して、そのまま部屋へ向かおうとする。
だが途中で、何かを思い出したように足を止めた。
「そういえば」
振り返る。
「義父さん、こっちで家買ったみたい」
「は?」
ヒロが固まる。
ノアは気にせず続けた。
「新築お披露目会するから、ヒロにも言っとけって」
「なんで俺まで!?」
「新築祝い、何がいいかな」
「いやその前に!」
ヒロが立ち上がる。
「裏の人間が自分の家披露していいのか!?」
ノアはくすりと笑った。
「義父さんに手を出そうって人、この世にいないよ」
「みんな、もうあの世に逝ってるし」
「怖いこと言うな!!」
ヒロのツッコミがリビングに響く。
ノアは満足したように小さく笑い、そのままソファへ腰を下ろした。
そこで、ふとテーブルの皿に気づく。
ラップがかかっている。
「……なにこれ」
「エリザが置いてった」
ヒロがラップを外す。
そこに並んでいたのは――完全にお子様ランチだった。
猫型のハンバーグ。
揚げたてらしい海老フライ。
タコさんウインナー。
ブロッコリーやにんじんまで星型に切られている。
そして中央には、丸く綺麗に包まれたオムライス。
黄色と白の肉球の柄。
しかも小さい旗まで刺さっていた。
「子供かよ……」
ヒロが思わず呟く。
だがノアは嫌そうな顔をしない。
むしろ少しだけ目を細めた。
「懐かしい」
その反応に、ヒロが首を傾げる。
「前からこんなの食ってたのか?」
「ん」
ノアはスプーンを手に取る。
「昔、エリザがよく作ってた」
どこか慣れた口調だった。
オムライスを一口食べる。
「……うま」
小さく呟く。
ヒロはその様子を見ながら、なんとも言えない顔になる。
(めちゃくちゃ甘やかされてんな……)
ヒロは向かいの席へ座った。
「ヒロも食べる?」
「いや、俺は腹いっぱい」
ノアは不思議そうに首を傾げる。
「……じゃあなんで座ってるの」
ヒロは少しだけ間を置いてから言った。
「飯食う時は、誰か一緒の方がいいだろ」
ノアがきょとんとする。
「そう?」
その反応に、ヒロは少しだけ苦笑した。
ノアは深く考えた様子もなく、再びオムライスを口へ運ぶ。
静かな時間だった。
食器の触れ合う小さな音だけが、夜のリビングに響いていた。




