EP1 起きたら奴隷がいた。しかも美少女だった(と思った)
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
目が覚めた瞬間、俺は三つの異常事態を同時に認識した。
一つ。
天井がやけにぐるぐるしている。
二つ。
喉が砂漠みたいに渇いている。
三つ。
――金髪の女の子が、俺のシャツ一枚で、俺のベッドを完全占拠している。
「……は?」
声が裏返った。
夢だ。これは夢だ。そう思えば、現実逃避としては十分成立する。
だが神様は、やけに丁寧だった。
視線をずらすと、テーブルの上に紙が一枚。
契約書。
見覚えのあるフォーマット。
見覚えのある署名。
そして、見覚えのありすぎる自分の名前。
「……俺、昨日、何やった?」
思い出そうとした瞬間、脳が拒否した。
代わりに「酒」「安売り」「一生に一度のノリ」という単語だけが反響する。
俺は一旦、現実から逃げることにした。
シャワーを浴びれば、だいたいの問題は一度リセットされる。
少なくとも、そう信じて生きてきた。
十分後。
バスルームから出た俺は、今度こそ完全に固まった。
金髪の少女――いや、金髪の“契約対象”が、畳の上で正座していた。
三つ指をついて。
「おはようございます、ご主人様」
「やめろ! その呼び方今すぐやめろ!」
反射で叫んでしまった。
近所迷惑とか、そんな余裕はなかった。
「では、マスター?」
「もっとダメだ!」
首をかしげる仕草は、どう見ても美少女。
なのに立ち居振る舞いが妙に堂々としている。
「本日より、あなた様のお手伝いをさせていただきます。
掃除、洗濯、炊事、その他――」
一瞬、間を置く。
「……炊事は無理ですね」
「即答かよ」
「掃除もできません」
「威張るな」
「洗濯は理論的に理解していますが、実践経験はありません」
「つまり?」
「やりません」
なんでそんなに自信満々なんだ。
頭を抱えていると、彼女が一歩、距離を詰めてきた。
「ですが、ご安心ください」
やけにいい笑顔だった。
「肉体的奉仕での問題解決は、非常に得意ですので」
「待て待て待て待て」
一歩下がる。
一歩進まれる。
完全にホラーだ。
「家事ができないなら、体で返せばいい。合理的でしょう?」
「合理性の使い方を間違えてる!」
止めようとして、勢い余って――押し倒した。
「あ」
世界が止まった。
理解してしまった。
見慣れた“それ”を、俺は確かに見てしまった。
思考が、綺麗に停止する。
「……」
沈黙の中、彼は不思議そうに俺を見上げた。
「何か問題でも?」
問題しかない。
その直後、彼はポケットから煙草を取り出した。
「吸うなァ!!」
こうして俺の最悪な契約生活は、
ヤニ臭く幕を開けたのだった。
――最悪だ。
だが、このまま終わる気もなかった。
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作者:しけもく




