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食料品販売店中間管理職異世界転生物語  作者: VATA


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10/11

その名は『プリンセス』


「私の名は『アストリアーシェ・レヴ・ホロウウィン』このホロウウィン王国の第一王女です」

「アストリアーシェ」……だから『リア』であり『アーシェ』でもある。


「へーこの国の王女は偽名を使って人の恋人に擦り寄ってから酔っ払って寝取ろうとしてくるんだー」

「…あの、リカさん?」

「へーなにかなー?」


 リカは完全にへそを曲げてしまい、セリフが完全に棒読みである。

その瞳も光を宿していない。

 今は小春亭の応接室を貸し切って話し合いを行なっている。


「いかに酒精が入っていたとは言え…あのような事を言うつもりはなかったのです……確かにお二人の事はとても好ましいとは思っているのは本当です」

「ふーん…本当に好きなのはハルトさんでしょー?凄いねー良かったねー」

「リカ…むしろ王女様にそんな態度が取れる君の方が凄いと思うんだけど」


 リカは膨れっ面でハルトにしがみついたままである。

流石のハルトもリカの方の正論が正しいと思う部分があるのかこの件については静観する事にした…それは現代常識がある二人だからこそであり、この世界では一夫多妻なが常識なのだが……

 どうしたものかと困り顔のアストリアーシェだが…さらにその隣では、顔面蒼白のアリアンレーゼがいた。


「…私は…知らなかったとは言え…王女様になんて態度を…不敬罪で打首ですか?」

「大丈夫よ.…そうなるようにこちらが行動したのだから…先ほど王女様も『不問にする』と言われたでしょ?」

「う、うん……本当に?」


 王女の侍女、レネ達が必死にアリアンレーゼを慰めていた。

 その惨状を眺めていたアンジェリカが立ち上がりリカの前まで来ると腰に手を当ててリカに宣言した。


「なんじゃ…リカ…お前は小さい女じゃの?」

「あん?なんですって?!」

「ハルト程の良い男を女どもが放っておくはずがあるまい?わかっておったじゃろ?」

「うっ…それはそうだけど…」

「それともお前はハルトが『大したことない男ね』と思われる方が良かったと言うのか?」

「そんなわけないでしょう!!こんなに誠実で!優しくて!誰よりも思い遣りのあるハルトさんは最高に決まってるでしょぅ!!」

「そうじゃとも…ここに居る者はみんなそう思っとる…そんなハルトの隣に居るのはお前じゃとも思っとる…」

「アンジェ…」


 その言葉にリカはハッとしたように周囲を見回す……


「悔しいがハルトを隣で支える事が出来るのはお前しかおらん…誰が見てもお似合いのカップルじゃ羨ましいの〜このこの〜」

「えへへ?そ、そうかな?」

「そうですわ!初めて会った時からなんて素敵な二人だろうと思っていましたもの!」


 流れが変わったことに気がついたアストリアーシェが全力で乗っかってきた。


「そ、そんなに褒めても許してあげないんだからねっ!」


 既にリカは満更でも無さそうな顔だ。


「わしはそんなお前達だから支えてやろうと決めたのじゃぞ」

「アンジェ…」

「私もまだ出会ってから日は浅いですが……お二人の誠実な人柄は理解しているつもりです…決してお二人に危害を加えようとは……」

「アーシェ…」


 なんだか和やかな雰囲気が漂い始めた……

これで丸く収まって…


「…って私が感動して許すとでも?それとこれは話が別でしょうが!!」

「あっれー?!」


 ならなかった。


「貴様!アストリアーシェ様に対して!!アストリアーシェ様は既にその男から『食受の宣誓』を受けておられるのだぞ!!」

「レネっ!!」

「「!!」」

「だから…王族だとか権力を持ち出されても困るんだけど?」

「貴様…」


 アストリアーシェの侍女のレネの言葉にアンジェリカとアリアンレーゼが反応した。

ハルトは隣のアンジェリカに質問してみる。


「食受の宣誓って?」

「…この国の王族に古くから伝わる求婚の儀式でな…伴侶に選んだ者に食べ物を送り『生涯共に生きよう』との意味を持つ儀式じゃ…古の儀式として伝わっておるが…すでに形式だけの伝承の様なものでな……今は庶民での告白に使われる事もあるな」

「ええ?!…あっ!たこ焼きか!」

「へー伝説の木の下で告白……みたいなものかしらね?」

「貴様!アストリアーシェ様は本気で!」

「ふーん」


 リカは休みの日によく見ていた異世界転生者のアニメを思い出した。

それらの作品に登場する王族の女性は、自由、恋愛などなく、国の為にその身を犠牲にすることが多い……

 なので規則に真面目な『リア』も天真爛漫な『アーシェ』も目の前のアストリアーシェの心の表れなのだと納得がいった。


「だからと言って無理やり話を進めるつもりはありません……今回の事は私個人として受けただけです……ハルトさんはその様な気持ちがなかった事も理解しています……」

「まぁ…そんな国の風習を言われても私たちには関係がないことだから…『個人』の感情なんて私は全く興味がないわ」

「!!」


 そのリカの言葉にアストリアーシェはハッとする……彼女が王女の立場からそんな事が許されない事も…そんな未来がない事も理解した上で、『個人的』な興味については不問にすると言っているのだ。


「リカ様には深く感謝を…」

「その『リカ様』ってのやめてよアーシェ…友達でしょ?」

「!…私を友と認めてくれるのですか?」

「一緒にたこ焼き食べた仲だものね……それを言うなら私もハルトさんから食べ物贈られてるじゃん!」


 なんと懐の深い女性だろうか…敵わない…アストリアーシェはそう感じた。


「うふふ…そうですね……お二人には感謝を…この想いがあれば私はこの先の人生を……」

「えっ?アーシェはハルトさん諦めるの?」

「えっ?!」

「あのね、故郷でもハルトさんはすごい人気だったの…毎日毎日ハルトさんの気を引く為にみんな一生懸命だったのよ?それはもう最新のゲーム機の抽選予約の当選確率ぐらいに大変だったのよ?それでも誰も諦めないんだもの」

「え?なにそれ初めて聞いたんだけど…」

「なのに、当の本人は鈍いし、鈍感だし、気付かないし!」

「なんか…申し訳ない…」


 思わずハルトは居心地悪く、姿勢を正してしまう。


「まぁ…貴女達の言いたい事は理解は出来るのよ…でも気持ちが追いつかないの!確かにハルトさんは誠実だし、優しいし思いやりもあるし、夜のテクも凄いし…」

「こいつ、さらっと自慢してるよな?」

「…確かに隣に立つのは私でありたいと願うけど、地位も権力も無い私だけの力じゃハルトさんを守り切れないかもしれないもの……少なくとも貴女達の力は、ハルトさんにとっては頼れる存在だわ…だから、今は貴女達がハルトさんの傍にいることを私は許容するわ……しかしこの先、世界を敵にしてでもハルトさんを守り続ける………それだけの覚悟を持てるかしら?」

「私は第一王女と言っても継承権を持たない側妃の娘です…リカの言う通り『王家』は最強の後ろ盾となる一方で、余計な争いを生む可能性もあります…ですが……」

「…だから今は許してあげるから……その時になったらまた考えてよ…あ!強引に迫って既成事実とか作るのは無しよ!ハルトさんの気持ちが第一だからね!……ハルトさん…その時はリカにちゃんと言ってね?」

「リカ…俺は…」


 リカはハルトの口に指を当てて発言を遮った。


「わかってる…でもね…ハルトさん…権力とか財力とかそんな力は私達の思わぬ結果を生む事はよく知っているでしょ?」

「!!…確かに…」


 権力の前には個人の力は意味をなさない…ダイコク時代に嫌と言うほど体験していた。


「だから、今はこれでいいんだよ…このまま二人で頑張っても良いし、みんなの力を借りても良いし、リカ以外にも手を出しても………全ては、ハルトさんの思うようにしたら良いんだよ」

「…ちょっと甘やかしが過ぎない?」

「…それほど愛されてるって理解してほしいな?」

 

 甘い空間に包まれた二人に声をかける者は居ない……入り込めないのもあるが自分の立ち位置を理解しているのだ。


「よし!話はまとまったようじゃな!ハルト!リカを嫁にする際にはワシも二番目で良いから嫁にしてくれ!」

「アンジェ?!」

「なんじゃ何か不都合でも?わしはこれでもお前達の事は好ましく思っておるぞ?」

「…アンジェ…本音は?」

「うっ!ハルトがワシを甘やかすのがいかんのじゃ!こんなちんちくりんな見た目で馬鹿にされんように精一杯やってきたのに!お前はいつもわしを子供扱いして!頭は撫でるわ!食べた事も無い様な甘味をコレでもかと与えるわ!今更お前無しの生活など考えられに決まっとるじゃろうが!!」

「あー…コレはハルトさんが悪いわね…分りましたアンジェリカ…あなたはハルトさんの愛人1号と認めます」

「やった!ハルト!これからもよろしくなのじゃ!」


 よくわからないが、愛人ができたらしい…愛人と言うより妹かな?

まぁ、家族という意味では間違いではないのかな?とりあえずアンジェの頭を撫でておく…

 ふと、リカを見ればハルトがそう考えることが当然であるような顔をしていた…


「次は王女様ね」

「貴様アストリアーシェ様に対して!」

「なに?これは個人的な話じゃないの?王家として権力を行使するって事ならすればいいわ…私たちは別にこの国にこだわりがあるわけじゃないもの…後は好きなところに行くだけよ」

「やめなさいレネ!…コレは王女としてでなく私個人としての話なの…だから、対等な話し合いを望んでいるのよ」

「私は…」

「あー王女様は待って…私達はまだ出会ったばかりだし…そんな貴族のしきたりみたいな関係は望んでないのよね…実際あなたの考えもまだわからないし、これからの付き合いで考えましょう」

「…私を受け入れてくれるのですか?」

「受け入れるかどうかはこれからよ… お互いの事を知らなさすぎるもの…なので一緒に成功体験を経験しましょう」

「えっ?」









 全員で場所を変え、来週よりオープンする予定のハルトの『ダイコク商店』にやってきた。


それは、商業ギルドと、小春亭の中間にある小さな店だった。


「確か祭りの間も作業していたところですよね?」

「あら、アーシェよく見ているわね?」


 リカがポケットから鍵を取り出すと、入り口のドアを開け中に入っていった。


「わぁ…」


 中はこじんまりとしていて、それでいて、他の店に比べて品数が多く店内には、調味料や食料品などが所狭しと並んでいる…ほとんどが『召喚。(ダイコク)』によって揃えられたものだ。


「商品は勝手に揃えちゃったけど…ごめんねハルトさん」

「これだけの商品をこんなに凄いな…大丈夫だった?」

「アカメ達が手伝ってくれたからね……とりあえずここは試験的に一般向けの商品を置いただけの店だからねー」


 棚を見れば、家庭向けの塩や、胡椒、砂糖などの一般的な調味料から石鹸や洗剤、食器類などの台所用品が数点…食事として提供されていないものに関する商品は、まだ取り扱ってはいなかった。

 その横では、シャンプーやリンス、化粧水など、女性向けの基礎化粧品などの扱いが充実していた。


「そういえばリカは雑貨の発注担当していたよね…」

「この店のターゲットは主婦層ですからね」


 店内の隅を見てみれば、子供向けの駄菓子のコーナーもあった。


「リカ!これは一体なんじゃ?」

「それはねーアンジェ…手を出して」


 恐る恐る手を出すアンジェリカの手の甲にリカが手にしたハンドクリームをぶにゅりと塗り付けた。


「びえっ!なんじゃこれは!!」

「アンジェ…こうやって全体に擦り込むのよ」


 リカが自分の手にもクリームをつけると、見本とばかりに実演して見せた。


「なんじゃこれは……ちょっと良い香りがするの」

「これはね、ハンドクリームと言ってこうやって塗ることで手肌が綺麗になるのよ」

「「「?!!!」」」


 女性陣の視線が一斉にリカに向けられた。


「さらにこれはねこうやって数滴お肌に擦り込むのよ…」

「そう言われてみればリカの手とか肌は綺麗ですね」

「コレを使っているからよ」


 取り出したのは保湿クリームや乳液…洗顔クリームとか基礎化粧品と呼ばれる類のものだ。


「…女の武器はなんだと思う?スキル?魔法?違うわ…美しさよ」


リカは上着を脱ぐと肩口まで露出した。


「…リカお前…肌が綺麗じゃな…」

「凄く白い…毎日厨房に居る割に指先も荒れてませんね」

「ふふっ…コレのおかげよ」」

 

 テーブルの上に一本の容器を取り出した。


「コレは?」

「腸内改善P-1ドリンクヨーグルトよ」

「?ポーションか?」

「うーん…まぁそんなものね…これを飲み続けることで、体の中から美しくなるのよ」

「「「?!!!!」」」


 この世界の食文化がアレだったのだ…体の中から改善する と言う考えは到底ないだろう。


「もちろんこれだけでは無意味よ。正しい食事にしっかりとした睡眠、そしてさっきの基礎化粧品、自分の美しさは自分で作り出すものなのよ」

「「「!!!」」」


 ダイコク時代にも試食や試飲販売の際はリカが行うと人だかりができていた気がする…


「あら、リカもう来てたのね」


 全員が衝撃を受ける中、そこにやってきたのは小春亭の女主人メリッサだった。


「頼まれていたものを持ってきたわ」

「ちょうどいいタイミングね…みんなメリッサを見て何か気がつかない?」


 理科の言葉に、全員の視線がメリッサに向けられる…


「メリッサ、お前、目尻のシワがなくなっておるな?」

「何かこう肌も艶があってすべすべですね」

「メリッサには、先日から既にこれらの商品を試してもらっているからね。今いい感じに効果が出ている頃でしょう…更にお風呂での入浴の効果もあるからね…」


 全員が生唾を飲み込んだ。


「それでこれはいかほどの対価を払えば……」

「?いえ…貴女達にはこれを無償で提供するわ…」

「?!無償で!!」

「…リカさん…その見返りは何かしら?」

「さすがアーシェ……安心して簡単なお仕事よ?」


 一体、自分達はどんな事をさせられるのだろうか?……女性たちが不安と期待で身震いした。


「大丈夫…すべてはハルトさんの為に……」














「…?なんかいい匂いしない?」

「…そう言えば……」


 大通りで町娘たちが買い物をしていると、仲間内の一人がそんな事を言い始めた。


「これは何の……?!」


 そんな彼女たちの隣を一人の侍女が通り過ぎた。

さらりと伸びた桃色の髪からは、爽やかな柑橘のような香りがしていた。

その表情も、うっすらとした化粧が施されており、その柔らかな唇にも、薄い桃色の光沢を放つ紅が塗られていた。


「ア、アーシェ…良い香りね」

「あら?レネ…この先の通りの『ダイコク』というお店で購入した洗髪液を使ってるの」


 彼女の同僚のような侍女が現れ、会話を始めるのだが、町娘たちは二人の会話に釘付けになっていた

 

「でも高いのでしょう?」

「それがね…開店キャンペーンで割引なのよ!」

「え、ええっ!それって凄くお得!」


 アーシェとレネの会話がどこかぎこちないが……聞き耳を立てている町娘達は気がつかない。


「無料の会員カードを作ると割引の得点がもらえるのよ。定期購入もあってこれもさらにお得になるの」

「すごいわね『ダイコク』ね!私も行ってみよう!」


 会話を終えた二人はどこか恥ずかしそうにしながら早足で去っていった。


「聞いた?」

「ええ『ダイコク』よ!」

「いきましょう!」


 町娘達も早足でダイコク目指して去っていった。







「んーレネはまだ硬いわね」

「お前っ…姫様にあの様な言葉遣い…」

「あはははっ!楽しかったわ!まるで私じゃ無いみたい!」

「お姫様は楽しんでるが?」

「アーシェ様…私は…」

「レネ…私達は友達なのでしょう?少なくとも私はそう思っているのだけど?」

「!!アーシェ様ぁ!!」

「うふふ…百合も尊いわね」


 抱き合う主従を見ながらリカは満足げに頷いた。


「アンジェとアリアはどうかしらね?」










「?今の娘可愛くなかった?」

「凄い格好だったな」


 彼女たちとすれ違った男達が振り返り、そう、感想を述べた。


「何を渡されたんだ?」

「えーと…『ダイコク商店』お店のチラシみたいだ…この袋は…なんだ?食べ物か?」

「何かいい匂いがするなぁ…」


 男は手に持った袋を破ると、中から丸い物体を取り出した…途端に周囲に香ばしい香りが漂った。

 周囲を見てみれば、同じように手渡された人たちが、中のものをかじり、驚きの声を上げている。


「食べ物みたいだな…」

「…!!硬っ!うまっ!」


 連れの男は、ボリボリとそれを噛み砕き飲み込んだ……袋に書いてある文字はデザインだと思われているが、見る人が見ればわかる。

『祖母のぽったん焼き』と書かれていた。

 休日のアーケード街でよく見かける『ティッシュ配り』である。

ティッシュペーパーはまだ普及していないので、代わりに個包装のお菓子を用意した。

貼り付けてあるチラシはリカが『ストアマネージャー』の機能から発見した『事務業務』に内包されていた『POP』作成で印刷したものだ…日本語で入力したはずなのだがこちらの世界の言葉に変換されていたらしい。


「ダイコク商店開店しました〜よろしく〜」

「開店セールなの〜じゃ〜」


 そのお菓子を配布している二人は丈の短いスカートに白のブラウス…首元には、簡単に結びつけた長い紐がぶら下がっていた。

この世界では馴染みがないが、どこからどう見てもギャルJKであった。

 燃えるような赤い髪をツインテールにしたアリアンレーゼと可愛らしいシュシュで髪をまとめたアンジェリカであった。

リカのメイクでやや日焼け風でラメ入りのアイシャドウにバッチリとマスカラの決まったその顔は二人の肩書きに気がつく者は居ないだろう。


「わし、こんな姿をギルドの者に見られたら立ち直れないのじゃ」

「大丈夫よ…アンジェ…今の貴女全く別人だもの」


 ノリノリのアリアンレーゼとおっかなびっくりのアンジェリカのコンビは、その身長差もありた良いコンビだった。


「これは何をしているんですか?」

「リリシー!」

「えっ?」

「いや、凛々しい格好をしたお客さんだなぁって」

「あら?ありがと…私もこの制服は気に入ってるからね…」


 二人に声をかけたのはギルド職員のリリシーだった。

アリアンレーゼのフォローで上手く誤魔化せた様だ。


「これは…新装開店のダイコク商店の宣伝です……じゃ」

「へぇ…ハルトさんのところね.あなたたちは隣人のアルバイトかしら?」

「えぇ…そんなところです」

「それにしても、あなたたちの格好はすごく可愛らしいわね…うちのギルドマスターにも似合いそうだわ」

「!!…そ、そうなんですか…」

「後で私も行ってみよ…ありがとね」


 リリシーは残りのお菓子を鷲掴みするとその場を去っていった。


「……アンジェ…大丈夫?」

「うっ…ううっ…ばれるかと思った…のじゃ」

「全部配り終わったのね…やるじゃない二人とも……どうしたの?」

「リカ!ワシは生きた心地がせんかったぞ!」


 様子を見に来たリカとハルトにアンジェリカは泣きついた。


「大丈夫だって絶対にバレないって言ったでしょ?」

「じゃが!ばれるかと思うと気が気でないんじゃ!」

「まぁいつものアンジェも凛として素敵だけど、今のアンジェも可愛くていいと思うよ?」

「!!にゃっ!にゃにお……」

「流石はハルトさん…釣った魚に水をちゃんとやるタイプなんですね」


 リカの放った二組の客引きにより、本日開店のダイコク商店は大繁盛するのだった。




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