45話 自分との語らい
気がついたらいつもの暗闇の中にいた。どこまでも広がり、上下左右もわからない。
今ならなんとなくわかる。ここは自分の心象風景なのだと・・・
結局、俺は自分が戦鬼なのだという現実から目をそらし、自分の内面を見ないで全て押し込めて生きてきた。
そして抑え続けた欲望や負の感情、鬼の力と狂気、それらが混ざり合いアイツは生まれた。
アイツは生まれてから今日まで俺が我慢し、目をそらしてきた様々なことを糧にどんどんと大きくなり、ついに俺から体の制御を奪うほどになった。
最初、アイツは俺の中の鬼なのだとばかり思っていた。しかし自分が裏側に回ってみるとよくわかる。
アイツは俺自身だった。俺の中の負の面を受け持ってくれていただけだった。
精神力で抑えているつもりだったが実際にはアイツに全て押し付けていただけだった。
「よ~やく気づいたのか、散々言っただろう?俺はお前だと」
いつの間にか目の前に自分がニヤニヤと笑いながら立っていた。
「ああ、よくわかったよ。俺はお前に押し付けていただけなんだな」
溜め息をつきつつしゃがみ込む。
「まあ、この体は俺が有効活用してやるよ」
「どうせ死ぬところだったんだ、構わないよ。ところで戦いはどうなったんだ?」
「意識を外に向けて集中しな。体の支配権はやらんが外の様子くらいは見せてやるよ」
目の前の自分が相変わらずニヤニヤとしながら手で目を覆ってきた。
集中すると自分の目を通して魔女狩り部隊との戦いが繰り広げられていた。
「凄いな・・・これが戦鬼の力か・・・」
一方的な虐殺を見ながら思わず呟く。俺があれだけ苦労していた魔女狩り部隊を軽々殲滅していく。
「そうだ!!お前が嫌い、避け、俺に押し付け続けた鬼の力だ。俺はお前の中にいる間ひたすら鬼の力と向き合い続けた。結果俺は鬼の力を全て引き出しても理性を失わないというかつて無い偉業を成し遂げた!!
どうだい?俺達にかなう生き物はこの世界にはもういないぜ?」
オーバーリアクションを繰り出しつつ熱っぽく語ってくる。
その目は狂気が滲みつつも確かに理性の光を残している。
その後も自分と語り合いつつ魔女狩り部隊が全滅するのを見つめ続けた。
「せっかく自由になったのに足りねえなぁ」
目の前の自分が退屈そうに欠伸をしている。
一方的な虐殺の結果血と肉の丘の上に俺達は座っていた。
(ダーハムさんの剣も折れてしまったな・・・今までありがとう、相棒)
心の中で黒剣に向かって手を合わせる。
「ん?あれは・・・クックックッ面白いことになってきたぜ」
ふと視線を向けるとフェブの馬車が走ってくる。
「お前!!まさか!!」
「そのまさかだよ。お前も望んでいただろ?アプリを喰らいたいってな~。そのためには邪魔な奴らは排除しようぜぇ」
「止めろ!!仲間には手を出すな!!」
もう1人の自分の肩をつかみ詰め寄る。
「残念だが、お前の言葉は聞かねえよ。黙って見てな」
肩を突き飛ばされると体の自由が効かなくなった。
「くそっ!!止めろ、止めてくれ・・・」
加速したフェブは確かに俺の攻撃をかわし、確実にこちらに手傷を負わせてくる。しかし戦鬼の回復力によって多少の怪我はすぐに塞がってしまい、逆にフェブはクリーンヒットは無くても徐々に体力が失われ苦しそうな顔つきになっていく。
「このまま・・・仲間を見殺しに・・・なんて・・・出来るかよーーー!!ガァァァァァ!!」
力を振り絞り呪縛を振りほどこうとする。
ここは俺の精神世界だ、全てはイメージと精神力でアイツを勝れば・・・
イメージするのは鬼の力を使いこなす自分・・・全てを飲み込み、受け入れ、自分の物にする。
「ガァァァァァァァァァ!!」
パキンッと音がしたと思ったら体の自由が戻ってきた。
「はあ、はあ、仲間は俺が守るんだ・・・やらせない!!」
負の自分が振り向き面白そうにこちらを見てくる。
「クックックッ面白いなあ、俺を止めたければ・・・わかるだろう?」
負の自分が虚空に手をかざすと空中から剣が現れた。
「絶対に止めてみせる」
こちらも虚空に手を伸ばし剣をイメージする。イメージするのは黒剣が2本。両手に現れた黒剣を握り、自分と対峙する。
外ではフロンティアのメンバーが自分と戦い始めている。
急がなくては・・・
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。




