40話 夜営
現在地がわからないため、方位磁針で方角だけを調べ、まっすぐ南下する形で距離を稼いだ。
半日ほど走ると森を見つけた。いい加減日も暮れそうなため森の中に隠れて野営する事にした。
「これからどうするんだい?」
マリアさんが焚き火用の枝を集めながら近づいてきた。
馬を木に繋ぎながら考える。
「特に考えて無かったんですよね。もともとアプリを助けることだけ考えていたのでこれだけの人数を逃がす手段は考えて無かったんですよ」
「じゃあアプリちゃん助けたあとどうするつもりだったの?」
「南下して自由都市を目指すつもりでした。おそらく関所は封鎖されていると思うので迂回する形で山越えをしようと」
「あんたバッカイ山脈を越えようとしてたの!?あそこは人間には無理よ!!険しすぎて山羊やカモシカくらいしか住めない山よ」
「山羊が登れるなら大丈夫ですよ。俺は親父に崖から落とされたことありますし。アプリ1人ならかついで登れます。
たださすがにみんな連れては難しいので他の方法を探さないといけませんね」
「ジャン、湖を見つけたんだけど水浴びしてもいい?リコちゃんを綺麗にしてあげたいの」
今後の事を考えながら集めた枝を束ねているとアプリがリコを連れて現れた。
捕まってた人達は一様に血と汗、埃などで汚れている。綺麗にできるなら皆したいだろう。
「いいよ、周辺に追っ手はいないみたいだし。
マリアさんも後は俺がやっておくので行ってきて下さい。ただ一応交代で見張りをたててください」
マリアが持っている枝も受け取る。
「ありがとう、じゃあお言葉に甘えて」
3人は連れ立ってアプリが来た方向へ戻っていった。
野営地点に戻ると軽く剣を振って下草を刈り取り空き地を作り、地面を掘り下げ土盛りする事で釜戸を作った。
種火を作り乾いた小枝に火をつけそのまま焚き火にする。
火が安定したら枝拾いの時についでに捕まえた兎をさばき、火のそばにくべる。
調理器具や鍋が無いため水分補充ように果物を集め、茸もついでに火のそばで焼く。
とりあえず食べ物は確保でき、あとは水浴びに行ったみんなが帰ってくるのを待つだけとなった。
しばらくのんびりと待ち戻ってきたみんなと食事となった。
「いや~お肉なんて久しぶりだわ、御馳走様」
マリアさんが満足そうにくつろいでいる。
「私はお肉は胃が受け付けないからあげるよ」
ミーシャは自分の分をリコにわけてあげ、自分は果物をかじっている。
「ありがとう!!お姉ちゃん」
リコはもらった兎肉を口いっぱいに頬張っている。
「さて、とりあえず今晩は俺が見張りしているんで皆さんは休んで下さい」
「じゃあ私も付き合うよ?」
アプリが残りの1人にカットした果物を食べさせてあげながら反応した。
「いいよ、疲れてるだろ?明日から強行軍になるから今晩はしっかり休んでくれ」
火に枝を投げ込みつつ今後について考える。
「これからどうするか決めたのかい?」
マリアが果物をかじりつつ聞いてくる。
「とりあえず関所に向けて進みます。移動しつつ関所を抜ける方法を考えます。
最悪俺が関所を落とします。本当は戦争に影響を与えそうなんであまりやりたくないんですが・・・」
「え!?帝国の関所の頑強さは知っているだろう?」
「まあなんとかなるでしょう。あくまで最後の手段なんで他の手段を見つけたらそちらにします。
とりあえずまだまだ先の話なんで休んでください」
みんなが寝た後、火の番をしつつ、今後について考える。
帝国を出る方法についてもそうだが、だんだんと理性を保てなくなりつつある自分自身についても・・・
アプリが襲われている姿が目に入った瞬間、完全に自分を見失っていた。
なんとか自分を取り戻せたがいまだに自分の中に血に対する興奮が残っている気がする。
1人見張りに起きているのだって眠れそうにないというのもある。
俺はこのままいったらどうなるのだろう・・・いつかは止まりきれずにアプリをも傷つける時がくるのだろうか。
悶々と考えつつ焚き火を眺める。
ふと顔をあげるとそこにはアプリがいた。
「何を考えていたの?難しい顔をして」
「なんでも無いよ。どうしたんだアプリ」
「なんだか、眠ろうとするとあの男達の姿が浮かんできて眠れないの・・・隣いいかな?」
隣を開けるとアプリはそこに座りもたれ掛かってきた。
「すまなかった、守りきれなくて、約束していたのに」
「そんなこと無い、助けに来てくれたじゃないですか。
必ず助けに来てくれるって信じてた」
アプリが笑顔で抱きついてきた。
「間に合って良かった・・・本当に助けられて良かった」
アプリを抱きしめ体の暖かさを確かめる。
アプリの温もりにただひたすら涙が溢れてくる。絶対に失いたくない・・・彼女だけは。
「ジャン・・・大丈夫、私はここにいますよ。あなたのそばに・・・」
俺とアプリはしばらくそのまま抱き合っていた。
「すまんな・・・醜態をさらした」
落ち着いたら恥ずかしくなり目線を合わせずに頬を掻く。
「ううん、ジャンの気持ちが少しだけでもわかって嬉しい」
アプリがはにかみつつ腕にしがみついている。
「さて、本当にもう休んでくれ、明日は早くに出発するから」
アプリの頭を撫でつつ外套を着せる。
「じゃあ眠るまで頭撫でててください・・・」
アプリはそのまま膝にもたれかかり目を閉じた。
そのままアプリの頭を撫でながら夜は更けていった。
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