11話 冒険者養成所ジアンビ
次の日、野営の片付けを済ませ、早朝のうちに次の街へ出発した。
歩きながらフェブにはアプリが仲間に加わることを話し、了承を得た。
「信頼出来る仲間が増えるのは良いことだし、なおかつ俺達に足りない後衛だってのもナイスだと思うよ。
・・・ところで昨夜夜中に2人していなくなってたけど、何があったんだ?今朝からずいぶん仲がいいみたいだが?」
「べ、別に何もなかったよ・・・」
「ほ~、あんな夜中に2人でいたことは認めるんだな。お前、あんな可愛い子と夜中に2人っきりで何もない訳ねぇだろ!ほれほれ白状しろよ」
「本当に何もないって・・・」
「は~あ。親友だと思ってたのにな~。お前の方が先に卒業するなんてな」
「何をだよ!・・・わかった、わかった、話すよ」
こうして全部白状させられた。もちろん水浴びを見てしまったのは内緒で・・・
昼近くなり、ようやく街にたどり着いた。門の所にある自警団詰め所にて盗賊達を引き渡し、街の中で捕まってた人達と別れた。俺達3人はちょっと早い昼飯を食べ、旅の荷物を買い足すことにした。
「携帯食料と水、アプリは盗賊に奪われた装備も買う必要があるよな」
「やっぱり馬車欲しいよな。盗賊達の馬車荷物載せるためにもらって行くか?俺、御者やれるから、ジャンは歩け」
「私の装備はいいですよ?別に1年目は座学がメインですし、魔歌は武器も必要ないですし・・・」
3人で適当に店を探しつつ、必要なものを話し合う。
「いや、最低限の装備は用意するべきだよ。座学以外にも剣技や棒術などの鍛錬もあるし。とりあえず服は買おう」
「そうだな~。なんかエロいしその格好・・・」
「そうかな・・・何か落ち着くんだけど」
アプリは服がなかったため下着の上に俺のシャツを着て、その上に俺のマントを羽織っている。サイズが格段に大きいためもの凄いブカブカになっている。まるでワンピースみたいな着こなしだが・・・胸元とかチラリと見える足とか確かにエロいかな・・・
「まず、服屋に行こうか・・・」
そうして買い出しを終え、馬車を譲ってもらい、養成所へ向けて出発した。すっかり日は高くなったが、日程に余裕もなくなってきたため。今日中に行ける所まで行こうということになった。
途中で野営を2回はさみ、3日後の昼すぎに、ようやく養成所のあるジアンビ山へとたどり着いた。この山はもともと様々な魔石や鉱石の取れる天然の洞窟があったが魔石に吸い寄せられた魔物が住み着くようになり、天然のダンジョンに変わった。そこをギルドが買収し、冒険者の育成に利用し始め、今では養成所として活用されている。
「ようやくついた~。日が暮れる前に入学手続きしようか」
この養成所は山の一角を塀で囲んで出来ており、塀の内側には様々な施設があり、魔石や鉱石目当ての行商なども多々訪れ、宿泊の為の宿まである。そのため、一部ではここを養成所の街ジアンビとも呼ばれている。
門をくぐった俺達はしばらく使わない馬車を行商人に売り、事務局とかかれた建物に入った。カウンターに進み書類を提出する。
「はい、確かに受け取りました。ではこちらのプレートに署名と血判をお願いします。こちらのプレートは学生証であると同時に卒業後にはギルドに所属している証として使えます」
「はい・・・これでいいですか?」
「はい、大丈夫です。こちらのプレートは血液による個人認証魔法がかかっておりまして、本人以外が持ってても表記内容が読めないようになっています。無くした場合再発行するのに銀貨1枚ほどかかるのでお気をつけ下さい」
銀貨1枚あれば4人家族が1月節約したら暮らせるくらいの金額で、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚となる。ちなみに盗賊団の懸賞金は銀貨10枚であった。
「ありがとうございました。後、寮はどこにあるんですか?」
「え~、大通りを街の奥に進みまして一番大きな建物が学舎となりましてそこの左手にあります、次に大きな建物が寮となります。寮の受付に先ほどのプレートを提出して頂くと部屋へと案内されます」
「私がそこまで案内しよう」
後ろに気配もなくいきなり見たこともない黒マントの男性が話しかけてきた。かなり大柄な男性で俺と同じくらいある。
「どちらさまですか?」
「あぁすまない、そんなに警戒しないで貰えないか?私はアイオーン・ギリム。養成所の所長にしてギルドマスターをしている。君にとってはアーク戦士団のメンバーと言った方が身近かな?君があのデイリーの秘蔵っ子か・・・君のことはあいつから手紙で聞いているよ。そちらはダーハムの息子だろう?よろしくお願いするよ。ではとりあえず寮まで案内しようか」
そう言ってアイオーンさんは歩き始めたので大急ぎで後を追った。
「・・・父さんからどういったことを聞いているのですか?」
「まだまだ未熟者だから、しっかりしごいてくれ・・・と、ほらここだよ。これから先、話す機会はまだまだあるだろう。また話す日を楽しみにしているよ」
そう言ってアイオーンさんはいきなり目の前から消えてしまった。
「今のは転移魔法ですか!?詠唱もなし、魔法陣も無しにできるなんて・・・もの凄い魔力を感じてはいましたけど、ギルドマスターは噂通り世界最高の魔術師なんですね」
若干興奮しながらアプリはまくしたてる。
「ははは・・・とりあえず部屋に荷物を運ぼう」
カウンターにプレートを見せると部屋番号を教えてくれた。
「とりあえず、荷物おいたら、ここにまた集合ということで・・・」
一時別れて各自に割り当てられた部屋に向かった。
部屋の鍵はギルドのプレートを差し込むと開く仕組みだ。ダンジョンで手に入れた貴重な魔石などもしまっておけるように狭いが個人部屋でセキュリティーはしっかりしている。
「さて、これからどうする?」
先に待っていたフェブが切り出した。
「もう良い時間だし晩御飯食べて、早めに休んで・・・入所式は明後日だし、明日丸1日つかって街を巡ろうか、飯は寮の食堂で食べられるらしいぞ」
こうして俺達のジアンビでの暮らしが始まった。
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます