表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

 千年の静寂の路地


京都には、表の顔と裏の顔がある。

華やかな寺院や観光地の裏側には、血管のように張り巡らされた路地裏があり、長い歴史の中で「無かったことにされた記憶」が澱のように溜まっていた。

ヤスオが「思い出相殺サービス」という不気味な名前を初めて聞いたのは、半年前のこと。

木屋町の雑居ビルの地下、看板も出ていないその事務所には、古びた西陣織の織機と最新の脳波測定器が同居していた。


「京都の人間は、忘れるのが得意なんですよ」

調整役が、当時まだ見習いだった補助係に教えるように言った。

「応仁の乱から幕末の騒乱まで、いちいち恨みを覚えていたら、この街では生きていけません。だから、負の記憶を正の記憶で打ち消す――『相殺』の技術が、裏の家業として発達したんですな」

ヤスオはその時、切実に「相殺」を求めていた。

恋人のイシコ。気が強く、正義感に溢れ、一度抱いた不信感を決して拭えない女。

あの日、嵐山の竹林で、ヤスオが余命幾ばくもない親戚の女性を支えて歩いていた姿を、イシコは最悪の形で目撃した。

胸の奥で、ヤスオは思った。


「思い出を相殺できるなら……」


その切実さが、やがて彼をフランソア喫茶室へと導くことになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ