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オオカミさんのかくれんぼ  作者: 筍とんぼ
第一章 海鈴祭準備
9/20

仲直り条約

 私は私を許せなかった。幼馴染でも所詮ただの他人。血もつながっていない、偶然小さい頃から一緒にいた他人(ヒト)。なのに、なんでも分かっていると思ってた。理解してる気になっていた。その癖に、いざあの光景を見たら信じもせずにすぐに逃げ出す。暁斗を疑って、確かめる勇気も持てずに怖くなって、一方的に避けた。そんな自分を絶対に許せなかった。たとえ、暁斗に打ち明け、許しをもらえても、私はあんな醜い私が気持ち悪くて消えてしまえばいいとも思った。


 だから、あの時なんで暁斗が平気に話しかけてきたのだろうと思った。暁斗だってきっと気づいていたと思う。


 もしかして、許してもらえたのかな。


 なんて、すぐに出てくるこんな私が嫌い。こんな私、死ねば…


「ま、待て…!!ちょっと、落ち着けよ」


 今まで溜めていた暁斗への懺悔が一気に放出された。


「とりあえず、拭けよ。ティッシュしかないけどさ」


 気が付かなかった。涙が出ていたなんて。泣きたいのは暁斗の方なのに。泣いてはいけない私が何故涙を流しているのだろう。そう考えても止まってはくれない。


「い、いらない。慰めもいらない。」

「いいから。そんなに言うなら俺が拭いてやるぞ!」


 そう言って、目元にティッシュを当ててくる。流石に拭かせるのは悪いと思い、渋々ティッシュを受けとる。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。もう、幼馴染としてなんていられない。だから…」

「だから、落ち着けって!」


 暁斗は肩を力強くつかみ、目をしっかりと見つめる。


「俺、気にしてねぇから。……。いや、それは嘘かも。」


 肩から手を離し、少し笑いながら頭をかく。


「最初、避けられてるんだって分かった時はちょっとショックだったんだ。こんなに長い間一緒に居たのに、信じてくれなかったんだって。夏夜もあいつらと一緒なんだなって。」


 暁斗は少し言葉に詰まる。


「でもさ、俺、鏡見て気づいたんだ。確かにこんな見た目じゃ勘違いされるよなって。態度もちょっと悪かったかもなって気づいたんだ。だから、別に夏夜が悪いわけじゃないんだよ。俺に原因があったんだ。そう思う方が自然なんだよ。」


 涙目になっていることに気づくと、後ろに振り返る。


「で、でも…!」

「あと、簡単に『死ねば』なんていうなよ!『幼馴染やめる』とかもさ!俺が悲しくなるだろ!それに、夏夜が醜いなんて言うなら俺だって同じだよ。同じこと…いや、それより酷いこと考えてたんだ。」


 鼻を赤くして、こちらに向き直す。


「だから、俺の方こそごめん。…。もう、忘れようぜ!今ので相殺!…って俺が言えることじゃないけどな。」


 ニコッと笑いかける暁斗につられ、思わず笑みがこぼれる。


(確かに、いくら引きずったところで状況は悪いままだよね…)


「…わかった!」

「じゃあ、指切りしようぜ!不満とかあったらお互いに言い合う!な?」

「うん!」

「よーし!仲直り条約締結!!」

「なにそれ?」


 笑いながら指切りをする。絶対にこの約束は破らない。心にそう決めた。


「なぁ、久しぶりに一緒に帰ろうぜ。ついでに寄り道も。」

「いいね、それ!」

「店は…」


 チャイムがなる。


「あー…。あとで決めよ!」

「そうだな。じゃあ、午後頑張れよ!」

「うん。暁斗も頑張ってね!」


 お互いにエールを送り、各教室へと向かった。

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