大きな子供
放送室へ向かう間にも人間誰一人とも出会うことはなかった。廊下にはただ私たちの足音が響くばかり。長く、不気味な廊下を進んだ先には放送中の看板が光っている部屋があった。
(ここが、放送室…)
私は委員ではないため、ここへ来たことはなかった。放送室があることすらも知らなかったほどだ。先輩曰く、実際に使われていることはないらしい。確かに漫画やアニメでよく見る、お昼の放送はない。呼び出しや業務用の連絡は、職員室にある機器で行っているようだ。
「おい、看板が光ってるぞ。誰か居るってことだろ」
「そうだね…。念の為、僕が先に行くよ。ほら、僕って顔が広いし?」
冗談交じりに語る先輩は私たちとドアの間に立つ。
「はぁ?校内なんだから、怪しいもなにもないだろ。な?夏夜」
2人の会話をぼんやりと見ていた私に突然振られ、ぎこちない返事を返すことしかできなかった。
「え?あぁ、そうだね…」
「ふーん」
淡白な返事を返し、先輩はすぐさまドアへ向き直す。しばらく沈黙が続いたあと
「わぁ!!」
と先輩が小さい子供をからかうときのような大きい声を出した。もっぱらこの手の類には私は強かったため、先輩の思惑通りに驚くことはなかった。
「ふふ。私たち高校生ですよ?こんなの、子供じゃないんで驚きませんよ」
「あはは。そうだよね。でも横をみてご覧。ここにはとっても怖がりな子供がいたらしい」
満面の笑みを浮かべている先輩が、指を差している方を見る。
(おっと、ここには可愛い子供がいたようだ)
目を丸くして、固まっている暁斗の姿があった。
「暁斗くんは、怖がりだから。頼りになる先輩が行ってあげるよ」
そう言った先輩はドアノブに手を掛ける。その言葉を耳にした暁斗は、顔を赤くしたままただ、先輩が開けるのを見ていることしかできなかった。
(そんなに怖かったのかな?)
私はいたずら心を抑え、先輩がドアを開けるのを見守った。




