続き7
「あ? まずいですね? 」
ヤタガラスさんが突然困った顔をした。
「え? 」
「どうしたの? 」
俺と<おやっさん>の野崎君が心配そうな顔になった。
「いや、つけられてたのか……」
そうヤタガラスさんが答えた。
「えええ? 何が来てるの? 」
俺が動揺して聞いた。
何かがマンションの壁を伝って来ているようだ。
「見つけたぞ、見つけだぞ」
そう呟いている。
「土砂加持の砂とかありましたよね」
俺が中西君に聞いた。
「ええ、結構いただいたんでありますが」
小さな木の桝に大切に入れてあったそれを窓の外に放り投げた。
「あああああああああああああ! それ、滅多に貰えないんですよっ! 」
中西君悶絶。
「ぐぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁ! 身体がぁぁぁぁ! 」
マンションの下の方の壁からも悶絶する声が聞こえる。
「うわぁ、無茶苦茶する」
ヤタガラスさんがドン引き。
「いやいや、この思い切りの良さが三鈴さんの夫の加茂さんの良いところですから」
「宵越しの砂は持たない」
<おやっさん>の野崎君の横で俺が答えた。
「いやいや、それ、本当に貴重なのにぃぃぃ! 」
中西君が叫ぶ叫ぶ。
「身体がぁぁぁ! 身体がぁぁぁ! 」
マンションの下の壁の方から呪うような恐ろしい声色で叫ぶ叫ぶ。
「何と言う地獄絵図」
ヤタガラスさんが結構ノリノリで答えた。
「お、お神酒がある」
俺がそう言うと神社で貰って来たらしいお神酒をとった。
「行きますか? 」
「勿論だとも! 」
俺がお神酒の蓋を開けるとそれをマンションの下の壁の声のするあたりにばら撒いた。
「ゴー! ファイヤー! 」
<おやっさん>の野崎君がライターで紙をグルグルにしたものに火をつけて投げつけた。
だが、着火しなかった。
「いや、日本酒程度のアルコール度数でばら撒いたら火なんかつかないでしょうよっ! 」
動揺している中西君が叫んだ。
何という計算違いだ。
俺はショックを受けた。




