続き47
道路の真ん中で大神さんが仁王立ちしてスラリと刀を抜いた。
「何だ、あいつ? 」
「アニメか何かのキャラクターと勘違いしてんじゃねぇのか? 」
そう言って運転している男がアクセルを吹かしてさらに発進させた。
で、大神さんが轢かれた。
「おいおいおいおい! 凄い音したぞ? 」
俺が叫んだ。
「黙ってろ! 」
俺の喉に銃口を突きつけている男がドスの効いた声で騒ぐ。
「いや、大丈夫ですよ。柳生十兵衛ですから」
野崎君がふふふと言う感じで笑った。
「柳生十兵衛? 」
いきなり助手席の男が騒ぐ。
「びっくりするだろうが! 」
運転している男が騒ぐ。
「いや、だって、首吊りしてる奴がさっきの奴を柳生十兵衛だと言うから」
助手席の男がそううろたえて答えた。
「頭がおかしいんだろ。ほっとけよ」
俺の喉に銃口を突きつけている男がそう捨て台詞を吐いた。
そしたら、ずぶりと屋根から刀が突き刺さって銃を持っている男の銃を持っている手が斬り落とされた。
それと同時に銃が発射される。
手が落ちたせいだろう。
それが俺の頬をぴゅんと掠めていった。
「ぎゃあうあああああああ! 」
斬り落とされた傷口から血を噴射させながら、俺の喉に銃口を突きつけていた男が半狂乱になっている。
何というスプラッタァ。
「えええ? 」
目の前のフロントガラスに血が飛び散って、運転していた男が慌ててブレーキを踏んだ。
「あ、止まっちゃまずいんじゃないかな? 」
俺が呟くと同時にまた天井から上段斬りで運転していた男のハンドルを掴んでいた腕が斬り落とされた。
「何という霊能力! 」
野崎君が興奮している。
「いや、別に霊能力いらないと思うんだけど」
「何を言うんですか。柳生十兵衛だからこそ八十キロで走行しているバンに跳ねられても平気なんですよ」
「それ、単にびっくり人間だよね」
俺が野崎君に呆れて突っ込んだ。
「いやいや、あの轢かれてからの無敵の斬り方を見ましたか? 」
野崎君が感動していた。
「あああああ! 柳生十兵衛! 柳生十兵衛だ! 」
血まみれの車内で発狂したように助手席の男がバンのドアを開けて走り去っていった。




