続き45
「ああ、また、首吊り野郎が来てるのか? 」
豆野さんの言葉が悪い。
「いやいや、蹴られただけですから」
「霊を手で捕まえたり、蹴るってのも凄いな」
野崎君の言葉に俺が頷く。
「いやいや、それがあるのがこの世界ですから」
野崎君が蹴られたのにダメージが無いのかにこりと笑った。
まあ、霊だしな。
「とにかく、この豆柴達を何とかしなくては。とは言え彼らにダメージを与えるのは駄目だぞ」
俺が野崎君にそう念を押す。
「いや、大人なんですし、加茂さんの本質的な部分を考えると、立ち上がるだけで彼らは離れますよ」
野崎君がそう答えた。
「いや、豆柴タンが転んでしまう」
「いやいや、私、蹴られましたよね」
「君は首吊りするチャレンジャーなんだから、少々の打撃で心が折れる事は無いだろう」
「いや、事故なんですけどね」
俺が豆柴タンに引きずられながら、野崎君と言い合いするのが凄くシュールだ。
しかも、どちらも霊なんで、見る人が見ると何か引きずられている人が虚空に向かってお話ししているように見えるんだろうな。
虚空に向かって話すだけなら、ああ危ない人だなと思うだろうけど、何かに引きずられているのは理解できないだろうから、皆、ドン引きだろう。
「まあ、豆柴タンの為に耐えるのは良いですが、この先にバンが待ってますんで、連れ去られちゃいますよ? 」
「ええ? 」
野崎君の忠告に俺が驚いた。
いや、まあ、それはそうなんだろうけど。
このまま豆柴タンが俺を引きずっても逃げきれないし。
「あーあーあー、あんたが攫われると困るんだよ」
そう言って祖母が俺の引きずられている方向に現れた。
「ワンッ! ワンッ! 」
豆柴タン達が祖母に吠える為に一斉に口を離した。
「所詮、犬ですね」
「馬鹿な。そう言うお馬鹿なところも豆柴タンの素晴らしさなのに」
野崎君の呟きに俺が突っ込みながら立つ。
「あああああ! 馬鹿犬どもぉぉぉ! 」
豆野さんが叫んだ。
それを意味が分からず、小首を傾げて豆野さんを見る豆柴タン達が震えるほど可愛かった。
これで週に三本か二本投稿に戻ります。




