10部 終わり
「おおおい。加茂君」
衝撃の展開から、次の日に水島先輩が話しかけてきた。
昨日は旨い旨いを連発で、皆にも振舞おうとしたのだが、誰も食べず。
俺達も人形の為に食べれず、サイズがオオサンショウウオにしたら中型くらいなのであっという間に水島先輩が食べきってしまった。
「どうしました? 」
「いや、今日の朝に出勤途中の池で美味しそうな野鯉を見つけたんだが、美味そうって思った瞬間に水面に浮かんできてな。気絶してるんだ」
そう水島先輩が〆てあるビニール袋に入れた野鯉を見せた。
「なななな、何ですって? 」
俺が驚いた。
何という便利な。
「こ、これは? 」
<おやっさん>の野崎君が追儺の実働部隊の人達を見た。
「でも、昨日は綺麗に焼いていましたよね」
三鈴さんがそう呟いた。
「いや実は、いろいろと味を試してみたくてレアの部分とか作って食べてたんだ。それが悪かったのかな? 」
そう水島さんが苦笑した。
「そ、それは……」
「ひょっとして……」
追儺の実働部隊の人達が動揺していた。
その時、窓辺に鳩が一羽止まっていた。
「お、美味そうな土鳩」
水島さんがそう呟いた途端に、その鳩は気絶して落ちていった。
それがどうも良くないとこに当たったらしくて、外で自動車がぶつかる音がした。
フロントガラスにでもドンと落ちて、運転手がビビったのかもしれない。
そして、俺達は見てしまった。
水島先輩が美味しそうって呟いたときに、目が金色に一瞬輝くのを。
「混ざった……」
「混ざってるよな……」
追儺の実働部隊の人達がざわざわ騒いだ。
「でも、これならこれから採集が便利ではありませんか? 」
そう俺が笑った。
「いや、確かにそうなんだがな」
俺の一言で驚愕している追儺の実働部隊の人達を無視して水島先輩がにっこり笑った。
「それなら、逆に良かったのでは? 」
そう三鈴さんも笑って答えた。
「今度人間に貴方達が戻れたら、何か美味しいものが取れたら持ってくるよ」
そう水島さんが笑った。
俺達もそれで皆が爽やかに笑った。
瞳孔が開いている追儺の実働部隊の人達と羨ましそうに水島先輩を睨んでいる石川さんを除いてだが。




