続き8
「たいした余裕だな」
そうオオサンショウウオがにやりと笑った。
「いえ。隠形が三鈴さんも気が付かないほど凄いと言う事は見つかったら終わりと言う事ではありませんか? 」
俺がそう笑った。
その横で三鈴さんがマジモードに入りつつある。
凄まじい霊圧を感じた。
「ちっ、だが、貴様だけは何とか呪詛で……」
オオサンショウウオがそう俺を睨んだ。
オオサンショウウオの目が一瞬金色になった。
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
その時だ。
オフィスの奥から堪えきれない笑い声がした。
オオサンショウウオを始め皆がそちらを見た。
そこには、ひょろりとした長身のフチなし眼鏡を付けた水島先輩が立っていた。
「やはり、貴方が出て来ましたか」
そう俺が笑った。
水島先輩は社内では粘り強く案件を処理する仕事人のような社員で人づきあいが悪いのだが、それは会社の人間には知られないようにしていた趣味があったせいなのだが、俺はその趣味をたった一人だけ知っていた。
「ふふふふふふふふふふふふふふふ、出てくるだろう。当たり前だ。俺の夢がそこにいるのだ」
そう水島先輩が笑った。
「雑食王の夢ですもんね」
「その通りだ」
水島先輩の笑いが止まらない。
何故か不安を感じたのかオオサンショウウオが震え出した。
「雑食王とは? 」
<おやっさん>の野崎君が驚いたように聞いてきた。
「その名の通り、日本のジビエに関わらず、あらゆる食に精通するスペシャリストだよ。9月だったかな、公園の隅でコオロギを捕まえているのを見てから俺だけは知っていたんだよ」
「コオロギ? 」
「コオロギ? 」
追儺の実働部隊の人達が口々に疑問形で聞いてきた。
「そう。コオロギを食べる為に捕まえていたんだ。なんでも旬は秋らしくて」
そう俺が笑った。
「えっ? 」
「ええっ? 」
そう、あの石川さんとともに彼もまた社内では仕事が出来ると言われる仕事人のような存在だったので、社内の皆がドン引きしていた。
「そう、あの粘り強さはあらゆる旬の物を食べているからのものだったんだ」
そう俺が皆に微笑んだら、全員が固まった。




