続き5
「あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ」
そう<おやっさん>の野崎君がそう呟くと、<角錐>さんのワンパンで吹っ飛んでいった。
「ヨシ」
俺がそれを見て親指を立てた。
「ヨシじゃねぇぇぇ! 何だこいつはぁぁぁ! 」
「いや、一度言ってみたかったんだと思います。名セリフですから」
「流石、お分かりいただけましたか」
そう腕がプラプラした黒子の人形で<おやっさん>の野崎君が満足気な顔で歩いて戻って来た。
「男の夢だよね」
俺がそう微笑んだ。
「もう、訳が分からんわっ! 」
そう<角錐>さんが頭を抱えるようにのっそりと窓から中に入ってきてテーブルの前に椅子に座らず胡坐をかいた。
それがちょうどちゃぶ台の位置になるのだから、やはり身体がでかいのだろう。
湯呑が凄く小さく見えた。
「もうちょっと大きいものが無いと駄目ですね」
そう柚原さんが慌てた。
基本的に相手に尽くすタイプなのだろう。
真面目な人だ。
そう言うのがストレスになって亡くなってしまったわけか。
「いや、何かまたどうでも良い事を考えてんな? 」
熊のぬいぐるみの柚原さんをじっと見て<角錐>さんが呟いた。
「どうでもよいとか失礼ですね」
そう俺が答えた。
「いや、もっと大事な話があるだろう」
「さっきまで三鈴さんの人形の格好に文句を言ってたくせに……」
「言うだろっ! 鬼とは戦う事にもプライドを持ってるんだ! 相手がエッチな人形になってたらびっくりするわっ! 」
「そんな事を言ったら、日本のアニメの主人公とか意味もなく薄着で戦ってますからね。しかも、何故か美少女が戦ってますし」
そう<おやっさん>の野崎君がそう突っ込んだ。
「そう言うのがおかしいのかもな」
そう<角錐>さんが呻く。
「美少女フィギュアは男のロマン」
いきなり、ブラック企業の社員たちのいる奥の方から、そうきっぱりと言い放つ声がした。
皆が一斉に振り返る。
そこにはやや小太りで四十歳近い石川さんと言う中年社員が自分のデスクで眼鏡をキラリとさせて椅子に座っていた。
「石川……君……」
常務が信じられないと言う顔でそちらを見た。




