続き1
そして、その日の夜に事件が起こった。
三鈴さんもフィギュアの姿で分署にいるし、我がブラック企業の社員はあーあーあーって感じだけど。
今も三鈴さんとちょっと気休めに話をしていた。
「そう言えば、三鈴さんって料理が上手なそうですね」
そう熊のぬいぐるみになって血をポツポツと滴らせている柚原さんが話しかけてきた。
「へぇぇぇ、それなら、今度一緒にお菓子を作りましょう」
そう西洋人形の薫子さんもにこにこと話す。
「ここが落ち着いたら、お休み貰っていいですか? 」
そう和気あいあいの雰囲気に空気が読めない話を<おやっさん>の野崎君がお願いして来た。
「また、彼女を探しに行くの? 」
「ええ」
「いや、探しに行っても良いけど、その恰好で行くなら夜とかの方が良いのでは? 」
「そうなんですけどね。今夜だけ探しに行くのは難しいんですよね。何しろ、彼女の実家が北海道ですから」
「どうやって、行くんですか? 海を渡らないといけないでしょ? 」
「フェリーか何かで、乗客の持ち物の人形の振りして乗って行こうかと」
「それ、無賃乗船ですよね」
<おやっさん>の野崎君に柚原さんが突っ込んだ。
「いやいや、元々、人形に運賃かかりませんから」
爽やかに<おやっさん>の野崎君が答えた。
この辺りは流石だ。
すでに辺りは暗くなっているので、夜だから出かけるチャンスなんで余計に焦っているようだ。
「え? 」
その時、三鈴さんが外を見て眉をひそめた。
しばらく遅れて、追儺の実働部隊の人達も急に慌ただしくなった。
どうも、何かが向かって来ているようだ。
おかげで社員たちがさらに動揺している。
追儺の実働部隊が殺気立っているからだ。




