8部 終わり
こうして、ご自分の可愛い娘の三鈴さんの心からのお願いに当主で義父の土御門治秋さんは憐憫からそれを認めた。
但し、このブラック企業になんと土御門家の三鈴分署を作る事となった。
やはり、切り札としての三鈴さんは必要との判断でだ。
大家のおばあさんが今日は立会いの下で、オフィス内を分割して囲んで、そこに分署が出来る事となった。
大家さんの強い押しもあり、当然土御門家の押しもあり、社長は逆らえないらしくて、同意せざるを得なかったらしい。
新たに、この部署の監視として、いつも来てくださるヤタガラスさんと土御門家から新しく人員が来るそうな。
話に聞くと、大神さんが志願したのだけど、これ以上の混乱は良くないとの事で止められたとか。
「これにて一件落着ですね」
そう柚原さんが話しかけてきた。
そう……いつの間にか、柚原さんは土御門家の実験で、熊のぬいぐるみに入って動けるようになった。
それは心が折れてしまった社長の唯一のお願いで、血が垂れて傍にいる見えない柚原さんの霊を何とかしてくれとの願いを土御門家が受け入れたのだ。
隣に柚原さんがいるので成仏させてくれとは言いにくかった社長のおかげで熊のぬいぐるみで柚原さんは戻ってきてしまった。
しかも、ダラダラ血を流す熊である。
自分で血をふき取るから良いものの、これはどうなんだろうか状態であった。
「でも、凄く嬉しい」
三鈴さんがそう喜んだ。
まあ、部屋が狭くなってブーブー言ってる社員も多いが俺的には三鈴さんの笑顔が嬉しい。
「良かったですね」
「ええ」
薫子さんに言われて三鈴さんも頷いた。
まあ、異様な雰囲気であるのは間違いないけれど。




