続き8
鈴与ちゃんがあっさりと帰ってしまったので、仕方ないから収拾を付けにかかった。
「ちょっと、流石に狂騒状態になっている人達が緑の液体を吐きそうになってるんで、そろそろ引っ込んでもらえますか? 」
「え? これから面白そうなのに、我、引っ込むの? 」
「引っ込んでくださいっ! 」
嫌そうな目玉に意外に薫子さんが今までにない厳しい言葉で叫んだ。
「ええええ? まあ、お嬢が言うなら仕方ないなぁ……」
そう言って目玉がぼやきながら消えた。
記憶は消してくれたものの社員たちの狂騒状態が酷かったもんで、着ているワイシャツが破れてたり、お茶を被ってたりしたので、不思議がっていた。
「あの、確かに私は加茂さんが素晴らしい人だと思ってます。私がただあの屋敷で静かに存在するだけの人生を外に開放してくださいました。たくさんの人を殺して居座る可能性もあったのですが、それも終わりました。ですから貴方達の幸せな家庭を乱す気はありません。私についている魔王の言う事は気にしなくて良いです」
そう静かに三鈴さんに薫子さんが話した。
三鈴さんもそれを聞いてじっと薫子さんを見ていた。
「……分かりました。貴方の言葉を信じます」
そう三鈴さんが答えた。
俺がほっとした。
そして、常務も皆もそれを見て安堵したようだ。
流石に毎日これでは大変だし。
「でも、実は旦那様の事だけでは無いんです。貴方には分かってもらえると思いますが、私はずっと巫女として学生生活をしながらいろいろな難事をこなしていました。もう死んでしまったので終わった事だと思っていました。でも、私も働いてみたかった。社会に出て見たかったんです」
そう三鈴さんがそう呟いた。
それを聞いて俺がはっとした。
そうだったのか。
薫子さんが働いて大喜びなのを見て、羨ましかったのか。
そう俺がちょっと気が付かなくて申し訳なく思った。
もっと、良く三鈴さんの気持ちを考えるべきだったのではないか。
そう後悔した。




