8部<女の闘い> 始まり
なぜだろうか。
結果として非常に素晴らしい解決策だと思った事が微妙に引っかかる状況になっている。
「なんでしょうかね? 微妙に歓迎のされ方が違いますよね」
そう<おやっさん>の野崎君が愚痴る 。
俺もそうだ。
俺は実績を上げて働いても働いても皆から舌打ちばかりだったのに……。
「ありがとう、薫子ちゃん。今日もお茶が美味しいよ」
「この軽い感じのビスケットが美味しいよね」
そう社員の皆がほほ笑みながら西洋人形を見ている。
「おかしい。数字が全てではなかったのか……」
俺がそう呟くと、皆がじろりと見る。
何という待遇の差。
「なぜ、睨まれるのでしょうかね? 」
「いや、不条理だよな」
俺と<おやっさん>の野崎君が愚痴りあう。
「いや、お前の場合、ドヤ顔が大きすぎるんだよ」
そう河村先輩がそう口出ししてきた。
「ドヤ顔なんてしてませんが……」
「そうか? これが上級国民だとか五月蠅すぎるんだよ」
「どうも誤解があるようですね」
「誤解を解きに来なくていいから。来たら俺も高木先輩みたいに辞めるぞ」
河村先輩が吐き捨てるように呟く。
「なんですか、その脅し」
「いや、現実だぞ」
「ちょっと二人とも、そんな事でもめないで仕事をしてくれ」
常務がそう間に入ってきた。
流石にこれ以上辞められるのは困るのだろう。
実際、業績は倍になったのに、人員は三分の一が辞めてしまった。
恐ろしいことに支社の人間を本社に来させようと転勤をかけたら、皆が辞表を出す状況になってしまったそうで、人員不足は非常に深刻になっていた。
「それよりもさ。あの……三鈴さんを何とかしてくれよ」
常務が俺にさらに声を潜めて囁いた。
そうなのだ。
薫子さんがこちらに入社した日から、ずっと三鈴さんが窓に張り付いているのだ。
俺的には嬉しいんだが……。
いつも読んでくださる二十人くらいの方に深い感謝を。
本当にありがとうございます。




