続き11
両開きのドアを開けると埃は全く舞っていなかった。
古いが丁寧なつくりの螺旋階段で上がる方式の大きな広間が見える。
広間はパーティー会場にも使えそうなレベルだ。
床には豪奢な赤いカーペットが階段にまで奇麗に敷き詰められている。
見た感じ風化もしていないし、それどころかそれらにも埃が積もっている形跡はなかった。
「あれ? 掃除したんですか? 」
俺が不思議そうに大家のおばあさんに聞いた。
「それなんだよ。誰もいないはずなのに奇麗なんだよ」
大家のおばあさんがそう不思議そうに答えた。
「中には入ってみたんですか? 」
「いや、そんな感じなんで流石にあたしも気味が悪くてね。中身は良く見ていないんだ」
「そんなんで、良く買いましたね」
俺と大家のおばあさんの話に<おやっさん>の野崎君が呆れたように突っ込んできた。
「本当だよ。孫もどうかしてると思ったんだよね」
そう困惑したように話した。
それを聞いて老齢の運転手さんだけでなく、常務も不安気な顔を隠さなかった。
「どちらにしろ、誰か掃除しているんでしょうね。庭のツタは何かが成長を阻害しているとしても、このカーペットとかの綺麗さはあり得ない」
そう<おやっさん>の野崎君が指で床をなぞった。
「いや、誰も入ってないはずなんだけどね。十年前に暴走族が肝試しで勝手に塀を越えて入って戻らなかったから、警察が入ったら庭で全員首を吊ってた以来、門の中にも誰も入ってないはずなんだけどね」
そう、大家のおばあさんが呟くと、常務と老齢の運転手さんが泣きそうな顔になった。
「でも、ツタはともかくも埃は無理でしょう」
<おやっさん>の野崎君が繰り返し冷ややかに答えた。
「ひぃぃぃっ! 」
その時に、老齢の運転手さんが首を絞められたような声を出した。
俺達が老齢の運転手さんが見ている方を見ると、ビスクドールと呼ばれる西洋人形が立っていた。




