続き3
かくして今夜も帰るのが遅くなってしまう。
せっかく、今夜は早く帰るつもりだったのに残念だ。
そもそも、寝ないからと言って仕事しすぎじゃねぇの?
そう思いながら、三鈴さんにスマホで連絡を入れると、新婚なのにとむくれられた。
「何という可愛さ。本当に超絶美少女なのに表情豊かだし、たまりません」
「何ですか? のろけですか? 」
俺が呟いてしまって、<おやっさん>の野崎君がそう不貞腐れたように突っ込んできた。
「せっかく、もう好きにしてくださいと言われたのに、貴方の護衛で私は彼女の所にいけないんですよ? 」
「いや、行ったけど友達の家に泊ってるとかで居なかったとか聞いたけど」
「そうですよ! 探しに行かないといけないのにっ! 」
そう<おやっさん>の野崎君が愚痴った。
そこは放置してあげた方が良いのではと思うけど。
「その屋敷ってどこなんですか? 」
俺がたまたま近くを通って来た常務に聞いた。
「いや、八時くらいに迎えに来るとか大家のおばあさんが言ってたから」
そう常務が爽やかに笑う。
「え? まだ連絡して無いですよね。最初から来る話になってたんですか? 」
俺が唖然として突っ込んだ。
「まあ、強引だからねぇ」
そう常務が困ったように苦笑した。
困ったもんだ。
あれだ。
普段は腰をかがめて農家ののんびりとしたおばあさんをやっているのに、自分の土地の辺りの送電線の工事が始まって電気関係の仕事の自動車が自分の土地に止まってるのを見た途端、まるで百メートル走の選手のように家に戻って電卓を持って、あっという間に現れて駐車場代を交渉する覚醒するおばあさんみたいだ。
やはり、どこにでも恐ろしいおばあさんはいるものだ。




