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続き2

「いやいや、冗談ですから」


 そう俺が困ってにっこり笑ったら、パカッと口が開いた。


「もう、いやぁぁぁぁあ! もう、耐えられないぃぃぃぃぃ! 」


 いきなりの絶叫を上げて、評判の悪かったお局様が会社から走り去っていった。


「あああ……ああああああ……あああああああああ……」


 常務がその場に膝から崩れてぴよぴーよって感じで泣きながら笑っていた。


 むう、これは困った。


「逝ってしまわれたかな? 」


 <おやっさん>の野崎君がそう呟いた。


「何と言うかあれだな」


「いとをかしですね」


 そう、それだ。


 膝から崩れて遠くを見据えたまま、笑いながら泣いている。


 お局様がドアを開け放して出ていったせいで風が吹いて、薄くなった白髪がささやかに舞うように動いていた。


 かって、動かざること山の如しと相手先に言われた、仕事を貰うまで帰らないブラック企業の誉れのような営業の鬼だった常務も諸行無常の響きありであった。


「まさに、平家物語ですね」


 流石だ。


 <おやっさん>の野崎君の言葉がしみじみと感じる。


 奢れるものは久しからずと言う奴だなぁ。


 とはいえ、ただでさえ少なくなって、土御門家絡みの仕事でてんてこ舞いになって、それでも残っている勇者のような先輩達が観音菩薩のように祈りを俺に捧げるので困ってしまう。


「分かりました。行くだけですから……」


「ありがとう」


 そう俺が話した途端に、常務が崩れ去っていた体勢からビシリと元に戻り仕事にてきぱきと戻った。


「「ええええええええええ? 」」


 俺と<おやっさん>の野崎君が衝撃を受けた。


 これが、動かざること山の如しの変形だとぉぉぉ?


「まだまだ、この会社は侮れない……」


 まるで何事も無かったかのように働く常務を見て、俺がそう呟いた。


 


 

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