続き1
「は? 屋敷にお化けが出る? 」
そう常務に告げられて驚いた。
「いや? 俺は別にそういうのはやってませんし。仕事はどうするんですか? 」
「いや、済まない。だけど、ここの大家さんの持っている屋敷なんだそうな。うちも長い付き合いで断れなくて困っているんだ」
常務が老け込んだ顔でそう話す。
社長が来なくなり、次々とベテラン社員が辞めていくと言う怪現象の中で必死に働く姿はいじましいくらいだった。
白髪も随分と増えていた。
「いや、それなら土御門家に頼めば……」
「いやいや、あそこに頼むのは本当にお金持ちじゃないと無理だよ」
困り切った顔で常務がそう話す。
「え? つまり、お友達価格でやってくれと言うんですか? 」
「と言うか、ちょっと見てくれるだけで良いとか言うんだ」
「はあ? 」
俺が唖然とした。
良くいる計算高いおばさんと言う事だろうか。
「ちょっと見てくれ? とかお友達価格で無く、タダ働きしろって言ってんですかね? 」
横に居た<おやっさん>の野崎君が冷やかに突っ込んだ。
「いや、うーん。困ったなぁ。付き合いが長いし、いろいろあるんだ」
そう創業時代から社長とか一緒に会社を興した常務が困った顔になる。
「いや、マジでタダでしろと? 土御門家に頼めませんけど」
「いや、だから、それを君に見て貰いたいと言うんだ。もう、見るだけで良いんだけど。大丈夫って言葉で良いんだ安心するし」
そう常務が必死だ。
「いや、こんなに次々と人が辞めたり休んだりしてる時にそんな暇がありますか? 」
<おやっさん>の野崎君がそう責めるように話すと皆が俺達を一斉にじろっと見た。
おやおや、いきなり皆が休んだり辞めたりは俺達のせいになってるのかな?
「呪っちゃおうかな……」
俺がぽそりと呟くと、またあちこちで悲鳴が上がった。
「頼むから、これ以上休まれると会社の業務が……頼むから……」
そうして、俺は五十代の男泣きと言うものを始めて見た。




