続き12
床に風穴が開いて、空が見えるようになった下の部屋の女性が悲鳴を上げた。
「流石に穴が開いたからビビるよな」
「鬼を見てビビってんじゃないですかね? 」
「いや、どう見ても貴方達を見てますが」
俺と<おやっさん>の野崎君の話をヤタガラスさんが否定した。
「糞っ! のんきな奴らめっ! 」
「そろそろ土御門家の連中が動くと思いますが」
鬼の<三日月>さんの舌打ちに<角錐>さんが警告した。
「え? 土御門家を待たないので? 」
「待つわけなかろうがっ! 」
俺の疑問に鬼の<三日月>さんがにべもなく叫ぶ。
「では、またお元気で……。これは双方において新しい時代の始まりになります」
そう俺がとたたたたと走って鬼の<三日月>さんの手を握った。
「くっ! 貴様っ! 」
震える様な憤怒とともに鬼の<三日月>さんが俺を睨む。
まるで俺を叩き潰したいような雰囲気だ。
左手で握手をしながら空いている右手を振り上げた。
「いけません。三鈴が来ました」
そう<角錐>が冷やかに、その右手を持って制止した。
確かに、アパートのすぐ近くに強大な力を感じる。
空間が歪むほどだ。
こないだ共同作業をしてから、三鈴さんをすぐに感じれるようになった。
「ちっ、とんだ事になったわ」
鬼の<三日月>さんが振り上げた手を降ろして、そのまま浮上して消えていく。
上空に雷雲が現れて、それに消える感じだ。
「どこまで考えてやってるんです? 」
ヤタガラスさんが震えるように聞いてきた。
「いや、あくまで向こうの提案ですから」
そう、俺が笑った。
ヤタガラスさんは異様なものを見るように俺を見ていたが。




