5部 終わり
「まずいな。まずいな。どうしょう……」
ヤタガラスさんがいきなり現れて呟きだす。
「ひぃぃぃっ? 」
俺達の影に潜んでいたらしくて、高木先輩がまた驚いた。
「どうしたんだい? 」
「まつろわぬものの一部が<三本首>の解放の後に次々解放されているんですが、その一体がこちらに向かってます」
そうヤタガラスさんがそう話す。
「は? 何? それ、どういうこと? 」
高木先輩が動揺している。
だが、すでに俺達は死んだふりに移行した。
「ちょっと、またそれですか? 何べん、死んだマネをするんだか分かんないんだけど! 」
ヤタガラスさんがそう話す。
「し、死んだ真似? ちょっと待てやぁ! 帰れよっ! 」
高木先輩が叫ぶ。
だが、俺達は動かない。
ただの人形のように振舞う。
「おいおいおいっ! なんでそうなるっ! ふざけんなよっ! 」
高木先輩が叫びまくった。
だが、俺達は動かない。
いわゆる死んだふりのプロとして振舞った。
大丈夫、俺達は人形だから。
ちょっと、その辺にどこでもある呪われた人形なだけです。
そう、思い込むことにした。
「くっ、窓から放り出してやるっ! 」
高木先輩が俺達を掴んで窓の方へ向かうと、その瞬間に固まった。
窓の外に巨大な何かの姿が見えたからだ。
「……なんだこれは? 」
高木先輩が震え出した。
そう言えば昔は現実主義者だとか言ってたが、歩き回る俺達みたいな呪いの人形を見て、こういうのが本当に存在すると知って、今、続けて巨大な妖に御対面してしまったとか胸熱。
立ったまま、足を痙攣させてモノノケダンスを踊っている高木先輩は新鮮だった。
胸がまたキュンとなった。




