続き12
「何と言うか。いろいろと先輩見てると胸がキュンキュンします」
俺が微笑んで口をパカッと開けて、そう高木先輩に話しかけた。
「いや、キュンキュンしなくて良いから! 」
高木先輩が半狂乱になって騒ぐ。
「まあ、これで和解と行きましょう」
そう<おやっさん>の野崎君がそう話す。
「どこに和解に向かう流れがあったんだか、言ってみろやぁぁぁ! 」
高木先輩がさらに激高している。
「いやいや、私も兄も実はほんのり上級だった事があるんですよ」
そう<おやっさん>の野崎君が話し出す。
「え? お兄さんがいたの? 」
「はい、十以上も年が離れた兄ですが……」
俺の驚きに<おやっさん>の野崎君が答えた。
「いや、上級の話とかしてないんだが」
高木先輩が不満そうな顔で呟いた。
「まあ、待ってください。つまらない身の上話ですが、兄も私も地元の県で屈指の進学校に行ってたんですよ。多い時は東大に30人近く行くくらいなんですが……。兄が生徒会長やってて、高校生なのに打ち上げで皆で酒飲んじゃってグデングデンになって、夜中の街を打ち上げに参加した十人以上で騒ぎながら歩いてたら、何と警察に見つかっちゃって」
「ほほう」
「それなのに、地元の進学校だから将来はあるからで無罪放免ですよ。ちなみに兄のクラスメートは毎年模試で名前がトップ近辺で出るくらいの頭の人で、夜、勉強中に窃盗の完全犯罪を思いついたから、どうしても実践したくなって、地元のお店に泥棒に入って警察に掴まりましてね。なのに、結果として東大に行くほどの人物だからおとがめなしですよ。この人、官僚になったらしいですけど」
「恐ろしい現実だな」
「恐ろしいのは<ほんのり上級>でこの程度なんですよ。これが貴方みたいな正真正銘の上級だと、どれほど凄いか」
「おおおおおおおおおお」
「いや、人形二つで盛り上がってるとこ悪いけど、上級の話はもう良いから」
そう村上先輩が悲しそうに頼んできた。
この<ほんのり上級>の話が事実なのが怖い。




