続き6
柚原さんと一緒に救急車に乗る社長を見送った後、俺は仕事の片づけに入った。
「いやいや、良く働きますね」
「せっかく、土御門家のおかげで仕事が取れてんだから、ちゃんとしないと」
そう、俺が<おやっさん>の野崎君に答えた。
「生真面目ですよね。そう言えば土御門家から聞きました? 」
「何を? 」
「いや、我々の人形に魂を移して戦うのを兵器化出来ないかって話が来てるそうですよ」
「え? そんな話が? 」
「ええ、極秘ですけどね」
「いや、ここで喋ったら極秘で無いのでは? 」
「あああっ! 内緒ですっ! 内緒っ! ここだけの話っ! 」
慌てて<おやっさん>の野崎君が皆に言う。
「内緒の話が一番広まるのに」
俺が呆れて突っ込んだ。
まあ、あり得る話ではあるし。
何しろ、魂だけで動くわけだから、兵士が死ぬ事もない。
無人機とかと同じ感覚で出来るし。
「なるほど、背中に爆弾を持った市松人形の部隊が突撃する訳か」
「そうです。身体が小さいから狭い場所でも忍び込めますし。実用化すれば兵士の損耗も無いし」
「それ言って良いの? 」
「あああああああああああっ! 」
<おやっさん>の野崎君が頭を抱えた。
「まあ、話は聞いて無いし、知らんかった事にしておこう。とりあえず、ちゃんと働いて業績を出さないと会社にも迷惑をかけたし」
そう俺がしみじみと話す。
「いやいや、真面目ですね。素晴らしい」
<おやっさん>の野崎君が拍手した。
「ったく」
高木先輩が舌打ちして荷物をまとめて帰社した。
「やはり、誤解があるようだな」
俺がそれを見て呟いた。
誤解は早く解いた方が良い、今夜にでも会いに行って誤解を解くべきだろう。
俺がそう思った。




