続き10
「仕方ない。人形だし死んだふりだ」
俺がそう言うと人形の身体をそのまま座席に転がって動かなくした。
「おおお、そう言えば、我々は人形でした」
<おやっさん>の野崎君がそう喜んで倒れて動かなくなった。
「き、汚いっ! 俺は人間なのにぃ! 」
中西君が絶叫した。
「いや、だから、ああいう妖は貴方達の妖気を察して追いかけて来ていると言うのに」
ヤタガラスさんが呆れたように俺達に突っ込んだ。
「何をやってんじゃ! 」
いきなり怒鳴られて、そこを見ると祖母が居た。
まあ、祖母と言っても霊体だが。
「死んだふりです」
「お、おぅ」
祖母が顔を覆って天を仰いでいた。
その瞬間凄まじいインパクトが軽自動車を襲う。
流石、軽自動車だけはあって、一撃でペコペコだ。
「あぎゃああああああああああああ! 」
中西君が絶叫した。
軽自動車ごと身体を潰されたのかと思えば無事で、ボコンと凹んだ側面を必死に中から直そうと押し戻すと言う意味不明な事をしていた。
勿論、被害はそれだけでなく、軽自動車は車道から跳ね飛ばされて側溝の木にぶつかっていた。
「諦めた方が良いのでは? 」
「チクショー! 軽自動車まで無くなったぁぁぁ! 」
<おやっさん>の野崎君の突っ込みに中西君は混乱したままだった。
「いや、あの巨大な牛鬼に食べられるかと言う状況なのに」
祖母がそう苦笑していた。
「中西君はタフなんですよ」
「そうそう」
俺がそう笑うと<おやっさん>の野崎君も頷いた。
だが、すでに、牛鬼は俺達の軽自動車を食べようと大きな口を開けて向かって来ていた。
つまり、シャチとかが良くやる体当たりとかの後で獲物が混乱している時に相手をサクッと食べるやり方なのだろう。
「ふうむ。実に理に適っている」
俺が感心して頷いた。
「いや、そう言う場合では本当に無いと思うんだが」
祖母が呆れ果てたように呟いた。




