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「カレン…なんだか顔色悪いぞ?大丈夫か?」
心配そうに声を掛けるのは横を歩く銀と青のオッド・アイの黒猫、ルオルだ。
猫が喋るなんて、と驚く人が多いが、実は呪いのせいらしい。
だが、カレンには横を向いて喋れるほど余裕がない。
「だい…じょうぶ。疲れてるせいだと思うの。次の街に着いたらたっぷり休むから気にしないで」
体中がだるい。
なんだかふらふらする。
「なんなら、おぶろうか?」
ヴァリエが提案してきたが、流石にそれは申し訳ない。
「ううん…大丈夫…」
「分かった。今まで、移動手段は乗り物で揺られてばっかりだったからな。無理もないさ。次の街に着く前に村があるよ。そこで休もう」
ヴァリエは地図を見ながら言う。
この辺りは魔法汽車どころか馬車も通っていないらしく、乗り物を持っていないカレン達は自分達の足で歩くしか手段はない。
ずっと乗り物ばかり乗って歩く機会がなかったせいで体力が落ちているのは薄々わかっていたが、同じ条件の二人が苦も無く歩いているのを見るとなんだか悔しい。
「前まではもうちょい体力あったと思うのにな」
「むしろ、おいしい物ばっか食べてたから体力は有り余ってるはずなのにね」
からかうようなヴァリエの突っ込みにぐさっとくる。
「そ、そんなに食べてないわよ!第一、条件は皆一緒でしょ!?」
むくれると、ヴァリエがにやっ、と意地悪く笑う。
「僕らはちゃんと食べた後は運動したもんね」
「うん、うん」
珍しくヴァリエとルオルの意見が一致した、
確かにヴァリエは剣技、ルオルは散歩をしていたような?
やることの無いカレンは部屋で読書をしていた。
「大丈夫だよ、カレンは太ってなんかないから」
優しいフォローをしたのはルオルだ。
「本当?ありがと、ルオル」
「へへん、おいらはヴァリエの馬鹿とは違うんだ、へまはしない」
その答えにカレンの復活したはずのテンションは一気に下がる。
「ど、どういうことよ、それ」
「へましたじゃないか」
「あっ…でもお前よりはましだ!」
いつもの言い合いに戻った二人の後ろで、カレンはとぼとぼと歩いた。
さっきまでしていただるさがひどくなってるような?
視界がぼやけて、耳鳴りまでしてくる。
もう、話題のことなど考えられなくなっていた。
とうとう目の前が全てモザイクに覆われると、追い討ちをかけるかのように石がカレンの足をつまずかせた。
もう、限界。
「カレン!!」
ヴァリエの叫び声が最後に聞こえた。




