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17.リーフォセリア王国騎士団長ギルベルト

 リーフォセリア王国のトレードカラーである紫を外壁色の基調として、騎士学院と同じく重厚感溢れる造りをしている五階建ての直方体の建物こそ、騎士学院の生徒達が卒業後にここに出入りする事を目指している場所だ。

 王都カルヴィスに他国が攻め入って来たり、魔物が襲撃して来た際にはここがカルヴィスの防衛拠点となる事もあって、建物の至る所に武装がされているのが一目で分かる。

 正門では二人の騎士団員が警備の目を光らせているし、空からの襲撃に備えて魔力をエネルギー弾として上空に撃ち出す事が可能な大きな砲台もある。


 更に騎士団の本部では徹底した身元確認がされており、正面玄関と裏口問わずまずは出入りする者全員が漏れなくボディチェックされる。

 例えそれが騎士学院の関係者だろうが、騎士団長だろうが王族の人間であろうが関係無しだ。

 そして騎士団の関係者では無い人物の場合、建物の中に入る時は武器を没収される。

 防具は着けっ放しで許されるのだが、安全面の観点から武器はどんな小さなものであろうと全て没収されて、帰る時に返却されるシステムなのだ。


 事実、普段は騎士団と関係無いレウスとゴーシュとセバクターは武器を没収された。

 レウスは元より、騎士学院の卒業生で現在騎士団に入っていないゴーシュとセバクターも対象となる。

 案内の騎士に先導されつつ騎士団長の執務室に向かう途中で、やけにセキュリティが厳しいものだ……と気になったレウスがその理由を他のメンバーに尋ねると、アレットがそれを教えてくれた。


「その昔、この王都カルヴィスを魔物の集団が襲ったのよ」

「魔物が?」

「うん。最初は凶暴化した野生の魔物が襲って来たのかと思ったらしいんだけど、やけに統率の取れていた動きで王都を荒らし回っていたんだって。でも結局騎士団と傭兵部隊の連合軍で全ての魔物が討伐されて、その後に分かった事実が……どうやら王国に恨みを持つ騎士団員の仕業だったらしいの」

「え、それって……」


 だったら騎士団員によるクーデターが勃発した事になる。

 まさか転生する前にそんな事が起こっていたなんて……と驚くレウスの横で、歩きながらアレットは話を続ける。


「それから本部では騎士団員以外は武器の持ち込みは禁止されて、さっきみたいなボディチェックを始めとするセキュリティの強化がされたんだって」

「そうなのか。でも騎士団に武器の持ち込みを制限するのは余り意味が無い様な気もするんだが……ちなみにそれって何年前の話なんだ?」

「えーっと、確か五十年程前って聞いたけど」

「だったら親父がまだ生まれる前だな?」

「そうだな。それは俺も人づてに聞いただけだ」


 そんなに昔から続いているセキュリティチェックなら仕方が無い、と割り切ったレウスの目の前で、案内役の騎士団員が足を止めた。


「こちらになります。団長には失礼の無い様にお願い致します」

「ああ、どうも」


 礼を言ったゴーシュが、リーフォセリアの紋章が刻み込まれた扉をコンコンとノックする。


「マウデル騎士学院からやって参りました、ゴーシュ・アーヴィンです」

「あー、話は聞いてんぜ。開いてるから入れよ」

「失礼します」


 中から聞こえて来た、おおよそ騎士らしく無い受け答えの仕方に若干戸惑いつつも、ゴーシュを先頭に一同は騎士団長の執務室の中に足を進める。

 そのドアの向こうには、騎士団の制服に身を包んだトラ頭の大柄な獣人が黒い革張りの豪華な椅子にどっかりと座って、悠々とした様子で一行を出迎える。


(このトラ獣人の男が、現在のリーフォセリアの騎士団長か……)


 前世では各国の騎士団長ともそれなりに交流があったレウスだが、今はただの一般人なので成り行きをゴーシュに任せる事にする。


「学院のエドガーから通話魔術で既に連絡は貰ってるよ。……っと、その前に俺が自己紹介しておかなきゃな。俺はリーフォセリア王国騎士団長のギルベルト・キュヒラーだ。それじゃそっちもそれぞれ自己紹介して貰えっか?」

「はい。私はアーヴィン商会のゴーシュ・アーヴィンです。そしてこちらがまず息子のレウス。それから騎士学院の学生のアレットにエルザ。最後に騎士学院の卒業生で現在は傭兵をしているセバクターです」


 ギルベルトと名乗った騎士団長とレウス達一行は、お互いに簡単に自己紹介を終えた。

 すると、ギルベルトがセバクターに注目する。


「あれ? お前はもしかして「炎血の閃光」か?」

「……そうです」

「炎血の閃光……?」


 聞き慣れない呼び方でセバクターを読んだギルベルトに対し、若干気まずそうにセバクターは認める。

 それを見たギルベルトは納得の表情を浮かべ、丸太の様に太い腕を組んだ。


「へー、まさかお前がこの地に戻って来てるとはねえ。去年うちの小隊長を倒してからは行方知れずになって、噂だけがこっちに流れて来ていたけど、今はこんなややこしい事に巻き込まれているのかよ?」

「あの、炎血の閃光って……?」


 疑問を口走ったレウスが無視されているので、それを引き継いでアレットが再び同じ質問をしてみると、ギルベルトは彼女に目を向けてなるべく簡潔に答えた。


「こいつの通り名だよ。まるで戦場に炎の様な閃光を描くロングソードの振るい方をして、その閃光の軌道上には相手の鮮血が飛び散る事からそう名付けられたんだ」

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