18.古代のドラゴンの遺物
登場人物紹介にギルベルト・キュヒラーを追加。
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そんな二つ名で呼ばれるレベルまでの活躍をしていたのか……とセバクターとギルベルト以外のメンバーが驚くが、その視線を向けられているセバクターは冷静に呟いた。
「今は俺の事よりも、先に考える事があるんじゃないのか?」
「あ……あー、そうだったな。それではキュヒラー騎士団長、改めて本題なのですが……」
「ああ、話してくれ。俺も断片的に話は聞いてっけど、色々と大変だったらしいから詳しく聞かせてくれよな」
セバクターの言葉で我に返ったゴーシュが、マウデル騎士学院で起こった侵入者の事件についてもう一度ギルベルトに説明する。
その報告を黙って聞いていたギルベルトは、一通り話を聞き終えてうんうんと頷いた。
「なーる程なあ、話としては良く分かったよ。その赤毛の男と女が学院に忍び込んで何かをしようとしてたって訳だ。そして俺達王国騎士団に、何か手掛かりは無いかと探しに来たらしいが……あいにく俺もそんな赤毛の奴等は知らねえな」
「そうですか……」
明らかにテンションが低くなるゴーシュだが、そんな彼を見てギルベルトは自分の予想を述べ始める。
「けど……その学院にそうやって忍び込むってこったあ、何かしらの理由があっての事なんだろうな。だってそうだろ? 学院に忍び込む……しかも真夜中の皆が寝静まっている時間帯にそうやってコソコソとネズミみてえに行動してたってのは、それなりに目的があってこそだろうな。だったらここに来る前に、騎士学院が狙われる理由に心当たりが無いかどうかをマウデル騎士学院の学院長に聞いてからでも良かったんじゃないのか?」
「それも……そうですね」
そう、確かにそうなのだ。
理由も無しに騎士学院がこうして狙われる訳が無い。あの赤毛の男女は何か目的があって、ああして真夜中に忍び込んで来た。
それを真っ先に考えたギルベルトは、ここで一つある事を思い出した。
「……そーいやあよお、騎士学院の中には古代のドラゴンの遺物があった筈だよな?」
「え? ああ……はい」
そう言えばそうだったとハッとした顔になるゴーシュだが、残りの十代のメンバー四人は一様に戸惑いの表情を浮かべる。
「えっ、それって何ですか?」
「ちょっと、それって私も初耳なんですけど」
「俺もそれ、初めて聞きましたよ」
「俺もですよ」
そのレウス達の反応を見たギルベルトが、少し驚きの表情を浮かべてから納得の表情になる。
「ああそうか、お前達は知らないのか。……だったら話しても良いが、この事は他の学生達には話すんじゃねえぞ。機密情報だからな」
「は、はい……」
そう口止めをしてから、ギルベルトはゴーシュと共に古代のドラゴンの遺物とやらの説明を始める。
「あのマウデル騎士学院の……まあ、これは機密事項だから場所もぼかすけど……騎士学院の何処かには古代のドラゴンの遺物を保管しているんだ。お前達も聞いた事があるだろう? 五百年以上前にこのエンヴィルーク・アンフェレイアを荒らし回った凶暴なドラゴンの話をよ」
「はい、聞いた事があります。そのドラゴンがこの世界中を焦土に変えそうになったのを、五人の勇者が命を懸けて討伐して阻止したと」
(……って、それは俺が討伐したドラゴンじゃないのか!?)
ドラゴンの遺物と言う時点で少し予想は出来たが、まさかそれが自分が討伐したあのドラゴンの話だとは思ってもみなかったレウスは、アレットの回答にすんでの所でそう声が出そうになった自分を抑えつつ黙って話の続きを聞く。
「そうだな。そのドラゴンは討伐され、英雄達はそれぞれドラゴンの身体を分け合って討伐の証としてそれぞれの国に持ち帰り、現在までその身体の一部が保管されている……。その一部がこのリーフォセリア王国にあり、強大な魔力を有しているそれを結界によって厳重に保管しているんだ。……これはあくまでも噂にしか過ぎないんだが、そこまでして身体の一部を保管し続ける理由はそのドラゴンの何かに関係があるらしいんだ。俺もこれ以上の事は知らないがな」
「ふむ……そうなるとますますその赤毛の男女はドラゴンの「何か」を目的に動いている、とも考えられますね」
(そ、それってまさか……そいつの身体を生贄にして復活の儀式をする気じゃあ……)
かなり言いたい。とてつもなく言いたい。
禁断の秘術として、死者の肉体を生贄として捧げる事によってその死者の魂を復活出来るものが五百年前には存在していた。
その理屈で言えば、何か適当なドラゴンの骸さえ残っていればそれに復活させた魂を植え付けて、また暴れ回らせる事が出来る。
今はその秘術がまだ残っているのかどうかは分からないが、もしその復活を目的に行動しているのならまた五百年前の悪夢が蘇る事になる。
しかし、レウスは言える筈も無かった。
ここで自分が「五百年前の勇者の生まれ変わりなんだ」と言ったとしても誰も信じてくれないだろうし、今までずっとそれを黙って生きて来たので尚更である。
今になって、まさかこんな形でずっとそれを黙っていたのが仇になるなんて……とレウスは一人後悔の念に駆られていた。




