8.第一王子とのお茶会
「今日は青のドレスにしてちょうだい。髪型は…アリッサに任せるわ」
「「かしこまりました」」
本日は久しぶりに弟君シャルル様とのお茶会とあって、嬉しそうに身支度をするピオニア様。普段なら、弟君とのお茶会はピオニア様とシャルル様、給仕としてメリッサが残るのだが・・・
「今日はアリッサも居てね」
「よろしいのですか?」
「何が?」
「ピオニア様、シャルル様とメリッサは身分が違えど幼馴染。私が茶会に居ては気が休まらないのでは・・・」
「そんなことは無いわ。それに、改めて貴女にシャルルを紹介したいのよ」
「・・・はい」
紹介すると言われても、こちらは侍女ですが・・・と思うアリッサだった。
「シャルル。久しぶりね」
「姉上。忙しさにかまけて、なかなかお会いできず申し訳ない」
「いいのよ。貴方が忙しいのは分かっているわ」
人払いがされた庭。その一画でお茶会は開かれた。ここには、ピオニア様、シャルル様、メリッサと私しか居ない。
「このお茶、美味しいな」
「そうでしょう。アリッサが淹れたのよ。アリッサこちらに」
「はい。ピオニア様」
ピオニア様に手招きされシャルル様の前に立つ。
「アリッサ。私の侍女よ」
「アリッサ・クレメントと申します」
「話は姉上とメリッサから聞いているよ。クレメント子爵領と言えば、保養地で有名だ」
「はい。温泉がございます」
「実は、私は小さい頃、お忍びで行ったことがあってね」
「!! 真でございますか」
「ああ。良いところだったよ」
「ありがとうございます」
お世辞を頂いてしまった。微笑みながらその様子を見守るピオニア様。
「ねえ。シャルル。あのお話をしてあげれば?」
「姉上、あの話は・・・」
「良いじゃない。アリッサに聞いてごらんなさいな」
コロコロ笑うピオニア様に対して、シャルル様は少し恥ずかしそうだ。
「私でお答えできることでしたら、なんなりと」
「いや、思い出話なんだが・・・」
そう言って、シャルル様がお話になられたのは、お忍びで保養地に来た際の事だった。
あれは7、8歳の頃だったかな。お忍びでクレメント子爵領に行ってね。温泉が有名と言っても、子供だった私にとっては、つまらなかった。そこで一人でその辺りの散策に出たのさ。後になって、すごい叱られたよ。まあ、その話はさて置き、散策に出たのだったね。温泉街から住宅地、高原の方まで行った。その高原での出来事さ。ある木の上に女の子が座ってた。「何してるの?」私が聞くと「リンゴを食べている」と答えた。「野のリンゴだから酸っぱいよ」と言って木の上から投げて寄こした。確かに酸っぱかった。木の上から下りてきた女の子は僕と同い年くらいに見えたよ。その子と夕暮れまで遊んだ。楽しかったよ。温泉の客の子だと言ったら帰りに温泉街まで送ってくれてね。実は、それが僕の初恋の子なんだ。
「同じ領の中と言っても、この話だけでは何も分からないだろう」
そう言って、シャルル様はお笑いになった。
・・・その女の子、私だ。




