9.王女の追求
「す、素敵な思い出ですね」
アリッサの頭の中は大混乱だった。まさか、王子から初恋の人だと言われるとは万が一にも思っていなかった。行儀見習いとして、お城に上がり、王女に仕えていることだけでも吃驚なのだ。もうアリッサの想像力を優に超えた出来事が起こっている。
(それ、私なんです。なんて言えるわけがない!!)
アリッサが求めているのは身の丈に合った結婚。王子様とあわよくば・・・なんて思ったことも考えたこともない。今は只、無事にこのお茶会が終わってくれることを祈るばかりだ。
「ありがとう。もう、相手の顔も思い出せないが、あのリンゴの味だけは鮮明に覚えているよ」
「左様でございますか」
(思い出は美しいまま、お持ちください。ごめんなさい)
「あら、メリッサに似てる気がするって昔、言っていなかったかしら?」とピオニア様。
「そうですね。聞いたことございます」とメリッサ。
アリッサには、メリッサと顔が似ている自覚がある。しかし、凡庸な顔であるという自信もあった。
「そうなのですか?」
「そんな事、言っていたかもしれないな」
「メリッサではないのですか?」
「その頃、私は実家に居たから違いますね」
(簡単に否定されてしまった・・・)
「アリッサ、貴女に心当たりはないのかしら?」
「はい!!申し訳ございません・・・(もう勘弁してください・・・)」
「そうか・・・残念だな」
(本当に申し訳ございません!!!)
心臓が口から飛び出るのではないかと思うほどの緊張の中、お茶会は終了した。
ピオニアの部屋に戻ってからも心臓がバクバク鳴っていた。
「ねえ、アリッサ?」
「はい!!」
思いがけず大きい声が出てしまった。
「貴女、本当に心当たりは無い?」
「(冷静に・・・)申し訳ありませんが、ございません」
「本当に?」
「はい」
「そう言えば、アリッサ。貴女、小さい頃は木に登ってよく叱られていたと話していたわね」
(メリッサ!!このタイミングでなんてことを)
「そうなの?アリッサ」
「は、はい。お転婆だとよく叱られていました」
「ふ~ん」
「お恥ずかしい限りです」
これで本当にもう勘弁して欲しい・・・。
「アリッサ」
「はい」
「私に嘘はつかないわよね」
「は、はい」
「では本当に心当たりは無いのね?」
親愛するピオニア様のアメジストの瞳で真っすぐ射抜かれたら・・・嘘はつけなかった。




