表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮忍者の異世界冒険記  作者: ちゃちゃもん吉
危険な本にご注意!?
PR
13/24

第十三話 仮忍者、仕事先を相談する

 気づくのが遅いながら、第~話を入れ直しました。

 それは、メイベッサとヌメルヤの二人が部屋に訪れた夕方の時のことである。


「は?仕事?」


「はい。この姿で問題ない仕事はありませぬでしょうか?」


 彩は夕食の皿を片手に、二人に仕事について相談した。

 あれから考え悩んでいたが、この町の求人情報がないのにどうしようもないため、大人である二人に尋ねた。ルーベルンストの町で働いているから、なにか良い仕事を知っているかもしれない。


「ん~?サイ君って冒険者じゃないのかね?」


 それにヌメルヤが不思議そうに首をかしげて逆に聞いてきた。

 ヌメルヤの言葉に彩はぶっと吹き出しそうになった。鳥の味がする肉を床に落とすところだった。


「ち、違いまする!拙者は冒険者ではござりませぬ!なにゆえ、そのようなことを?」


「何故って、それは私が言いたいね。そんなレアな防具を身につけているのに」


「防具?」


 このロングダウンコートが、と彩は何を言っているのとポカンとした顔になる。

メイベッサもいぶかしんでおり、こんな軽いやつがとヌメルヤに疑わしげな視線を向ける。

その反応にヌメルヤは意外だと言わんばかりに驚きを見せる。


「たしか、その防具は特別な地域でしか取れない素材の特殊繊維で作られた衣形状の軽装防具だよ。名前はボフマンジャット。衣なのに刃物でもまったく破れなく抗炎特化していて、そこらのプレートメイルより丈夫だったはずだよ。製作者はワーフゼムンで、今では彼が認めた人ではないと手に入らない代物だよ」


「ワーフゼムンの製品だって!?幾人もの英雄を助けてくれたとされる、あの伝説の鍛冶師かい!?」


 信じられないと驚愕した表情でロングコートを凝視するメイベッサに、彩はギョッと今にも剥がれそうな危険性を感じて、身を引きながら違う違うとぶんぶん手を振る。


「その伝説とされる鍛冶師殿はどの方は知りませぬが、その方が作ったものではありませぬ!それに、これは防具ではなく、ただの防寒用の上着でありまする!」


 なんでものないものだと脅えながらも体を張って手を前にかざす。きっちりと夕食プレートを安全圏に移してから。

 全力とした否定主張に分かってくれたのか、獲物を狙うような鋭くぎらつく瞳が奥に引っ込んだ。

 そういえば、とヌメルヤが顎に指を当てて呟く。


「元々は年中雪にまみれる地方での防寒着として作られていたと聞いた気がするね。それをワーフゼムンが防具として使えないかと着目したんだったかな」


 初めは衣服として使われていたことを思い出したヌメルヤの話に、彩は防寒着なのだと肯いてロングダウンコートを触らせる。剥ぎ取られないために両腕だけ差し出した。

 それが分かったのか、メイベッサとついでにヌメルヤも乱雑ながら引っ張らずにつまんだ。以前にボフマンジャットを目にして触ったことがあるらしく、ヌメルヤはその防具でないことに納得し、メイベッサも普通に戻る。


「防寒着ねぇ。あたしは変わった服にしか見えないけど…本当にこんな防具があるのかい?頼りなさそうだし、それもワーフゼムンが手掛けた作品の一つだなんて聞いたことがないね」


「元冒険者の君でも知らないのは無理もないさ。さっき言ったように、ワーフゼムンが認めた者にしか渡さないし、ボフマンジャットがあるのは北国『ノグスアーゼン』だけにしかないのさ」


 知る人ぞ知るということらしい。別国の特産品的なものなのだろう。

 異世界ファンタジー世界なのに、ダウン系の服があるとは…地球に似た衣服が他にもあるのかな、と彩はロングダウンコートを見やる。

 そんな彩を横に国の名を聞いたメイベッサが嫌そうに顔を歪ませる。


「ノグスアーゼンか…あそこは鎖国さが残っているからねぇ。情報がなかなか来ないし、行き難い」


「険しい場所なのでござりますか?」


「それもあるんだけど、蟲人族にとってはきつい寒い国だからね…」


 蟲人族は寒いのがきついと彩は首をかしげれば、蟲人族は昆虫・爬虫類だと植えつけられた知識から、小学校で学んだことを思い出す。

 理科の生物の授業で、爬虫類や両生類や昆虫、魚類といった生物は変温動物と言って、体温を保てず、外の温度により体温が変化する動物だと教わった。環境にあった温度でない体が耐えきれないから、寒すぎるところは駄目なのだとか。

 地球での知識が『ジヴォートノエ』の住人に当てはまるなら……蟲人族は寒いのは苦手ってことなのか。


「私も行けないな。あそこにしかない物品があって魅力的なところがあるらしいけど、さすがに凍死したくないからねぇ。厚い防寒着を何重にも重ね着るしかないけど、到着する前に重くて打っ倒れてしまう」


 行商人が道途中で果てるのは覚悟しているけど、極寒の場所では勘弁、とヌメルヤは苦笑する。メイベッサも肩をすくめて同意する。

 どうやら地球での知識が当たっていたようだ。生体の特徴も一致するかもしれないと頭に入れながら、彩は残りの食事を口に入れる。


「防具の件について、さておき。それでサイを冒険者じゃないかって言ったのかい。まぁ、こんな変わったもんはたいてい冒険者だからね。ということは、サイはノグスアーゼンから来たのかい?」


 彩は呑みこもうとした肉が気管に詰まりそうになった。なんとか、食道に通し、違和感無いように胃に入れる。


「いえ、違いまする。これは貰い物でありまする!寒がりなもので……そ、それで、この姿で働けていくところを知りませぬか?」


 話がそれているのを戻し、それ以上聞かれないようにと、彩はもう一度二人に尋ねる。


「頼むにあたって我儘な条件でありますが、出来ればこの上着を着たままでこれを取るようなことをしないものが良いのでござりますが…」


 彩は顔に巻き付けている包帯を示して尋ねる。


「“それ”をつけたままねぇ…一応確認するけど、成人にはなっていないのかい?」


 成人と言うと二十歳ということだろうか、彩は正直に成人していないと答える。

 そうなると、とメイベッサは腕を組んで彩をじっと見る。


「声と動作で子供なのは分かるのはいいが、やはり見た目だね。今人手が欲しいところは料理店だね。接客業は子供でも出来る。私服でもかまわない店はあるけど、注文と料理運びと皿洗いをすることが接客仕事の当然。客と顔を合わせが常だから、見た目の印象が大事さね。フード付きの上着で、肌がさらさないよう体に“それ”が巻かれていると、あんたのことを知らなく意味も知らない人にとっちゃ不快な思いを与えちまうのさ」


 脱いでくれなんて無理には言わないだろうね、とメイベッサは人様の事情にはつっこむことはしないとフォローする。しかし、遠まわしに雇ってくれそうにないことを教えてもいた。

 看病してくれた二人だが、何も聞かず包帯だけでなく服を脱がすことをしなかった。酷い傷痕があるから見られたくないのだと深読みしてくれたのか、あえて手を出さなかったのではと思う。プライベートといったことは自分から話さない限り、聞かないといった姿勢で接していた。

 見た目から怪しいのに何も聞かず、自分は偽っているが、この世界では顔をさらけ出さないような怪我とかしている人はけっこういるのだろうか。彩はこの世界は思ったよりも危険なのではと思考が別方向に行った。


「旅人なら、ここに足をつけるってわけじゃないんだろ」


「あ、はい。旅費が満足とするまでは…」


 なるべく異世界にわたる情報が集まりやすい場所に行きたいために、お金を稼がなくてはならない。この世界の移動手段はラクジャ車という馬と蜥蜴が混じった魔物が引く馬車が運行されていると、植えつけられた知識にあった。これは荷物だけでなく、人も運んでくれて、バスみたいに長距離移動には適しているとか。これが正しいかは後で調べるとして、所持品が多少の武器だけで防具は一切ないから、遠出となると一人旅は安心出来ない。

 次に移動するのにどれほど稼げればいいかも考えとかないと思ったところ、彩はふとあることに気付く。偽りで旅人ではあるのだが、そのことを昨日二人にちゃんと言っていただろうか。あまりのショックなことと頭痛に重要なこと以外とぎれがちだが…ちゃんと教えていたのか。彩はそう納得して、二人の話に意識を戻す。


「だとすると、日払いか週払いの仕事が良さそうだ。妥当なのは冒険者稼業だけど…」


 冒険者。家の掃除から魔物退治に護衛役などなどいかなる仕事もこなす、なんでも稼業。ギルドという冒険者の為のお仕事仲介(紹介)管理業務組織があり、そこで送られる仕事を好きに選べる形として出来ている。あとのことはブック・シーから植えつけられていない。話からして、すぐにお金が手に入る職業そうだ。

 それなら、と彩は意気込みを見せるも、メイベッサの次の言葉で萎んでしまう。


「ギルドの冒険者は16歳以上じゃないと入れないんだよ」


「えぇッ!?」


 どうしてでござりますか、と彩は膝立ちになって訳を尋ねる。

 聞くところ、ギルドの冒険者はなんでも請負稼業ではあるが、大半はマナ濃度が濃い地域での素材採取と魔物討伐なので当然と命の危険は伴う。特に経験が少ない若者は死ぬ確率が高いため、命を失いやすい。

 かつて、子供から老人まで年齢関係なく冒険者加入出来たが、過去に魔物による大天災が発生した。国の騎士団だけでなく全冒険者も駆り出さなくてはならない、前代未聞とされる被害が襲われた。国のいくつかが喪失とされるほどに大量の死亡者が出された。その八割が未成年者で、ある種族の部族が絶滅危惧種とされるほどに人口低下と少子化となって、種が残らない危険な時期があったと歴史に記録される。危機は乗り越えたが、あまりの凄惨さが人々に深い傷痕を残された。

 歴史に残されるほどの被害を二度と出さないよう、ギルドは冒険者加入条件に成人となす16歳以上の年齢制限を設けた。


「けど、ある地域では人手が少なく金銭面のこともあって、特別に年齢制限関係ない加入方法がある。一つはギルドがある住居地帯での生まれで、幼少時用の依頼をこなしていたこと。サイはこちらかと思ったが違うようだね。それと、もう一つは個人ギルドに入ること」


「個人ギルド?」


「国が立ちあげた各住居地帯に一つはあるのが、皆がよく知っているギルド。チーム結成した冒険者が立ち上げたのが個人ギルドだよ。ギルドと変わらず依頼を紹介したりするけど、冒険者でもあるから自ら仕事をこなしたりしている」


「個人ギルドは5~20人以上ぐらいだが、実力ある冒険者達だから仕事成功確率と信用度が高い。彼らは独自のギルド名で呼ばれているよ。看板がラッキスターだったらラッキスターといった感じだ。子供にとって国の騎士団同様の憧れとなっている。ファンもあるほどだ。田舎でも知られているはずなのだが…」


「す、すみませぬ……興味がなかったので…」


 ギクッと固まりそうになったが、彩は嘘で返す。分かりやすく目を泳がして小声となっていたが。

 その反応に気まずいからと思ったのか、二人は気にすることなく話を続ける。


「それで、この二つが方法はあるけど、一つ目はギルド参加証明書が必要で、二つ目は個人ギルドマスターに認められれば入れる。個人ギルドはこの町にないから前者しかないんだけど、ギルド参加証明書を持っているかい?」


「持って…いませぬ」


 異世界の人間なのだから参加証明書など持っているはずがない。そして、11歳だから条件を果たせない。

 年齢は誤魔化してみるとか、と彩は偽装年齢を図ろうという思考が走る―――が。


「若い奴らが馬鹿に走らないようにと詐称が発覚する魔具があるから、騙して加入は出来ないようにしているよ。念のために言っておくけど、偽ってやろうとするんじゃないよ。まあ、声とその背丈だと見えなくはないね。だけど、14歳ぐらいだってバレるだろうね」


 そんなことはしない、と焦って否定しようとしたが、最後に聞き捨てならない単語を掠め、口から出ずに喉あたりで消える。


「…………14、に見えまするか?」


「見えるね。それか一つ年上ぐらいってところか」


「私もそれぐらいに見えるね。顔を隠していても、どうもその歳がぴたって当てはまるよ。ん?サイ君、顔を手で覆ってどうしたんだい?」


 彩は悲愴に陥る。心なしか目元に濡れる感触がある気がする。

 彩自身、実年齢より上に見られることは多い。まだ、小学生なのに背が高い所為で中学生、悪くて高校生と間違えられるのが多々だった。

 子供と言われていることから、希望的に地球とは違い実年齢同等なのだと分かっているのかと思えば、それより三つ上と勘違いされていた。体の線が見えず、恰好が恰好なだけに男だと思われるのは百歩譲って仕方ない。だが、どうして年齢は誤解されることに納得しがたい。地球での日本人の平均身長は外国――ヨーロッパやアメリカ――では低すぎることから、もっと若く下に見られるらしい。

 異世界にして外国と似た世界なのだから、それに当てはまるかと思いきや、彩の場合、逆に地球と変わらず四、五ではないが、三つ上と見られていた。


「そ、その…実年齢通りに見られたことが、う、嬉しく思いまして……。な、なにせ、こんな姿ゆえ、よくよく間違えられてばかりでござりましたから…」


 正直に教えたかったが、すでに男と思われて偽名を使っていることから、その設定を使おうと考える。もしかしたら、11では働ける場がないかもしれない。また、他者の目線にあった方が疑われずに済むと偽りを重ねる。後は男の方がなにかと話が進めやすく、安全と言う考慮もあって。

 これにより、彩は「名前はサイ。年齢は14歳。性別・男」という人物設定として通すことにした。騙していることに正直心が痛む。命の恩人である人に嘘をつくなんて、悪いことをして彩は後ろめたく感じていた。

 しかし、今の彩は忍者なのだ。仮だとしても忍者。忍者は本名・本経歴を語ってはいけない。忍者となったからには忍者としての姿でやり通す。

 そう頭が冷静だが、なんとも言えない感情がごちゃまぜとなっている心を抑えながら、彩は嬉しいと笑って誤魔化す。ヌメルヤとメイベッサから大変だったね、と慰められた。三人とも笑っていたが、一人だけ心の内嘆きでいっぱいだった。


「あ。そうだ、あそこならサイ君を雇ってくれるのではないかな?日頃募集をかけていると聞いたが」


 彩を慰めた後、ヌメルヤは思い出したと手を叩いて言った。

 それにメイベッサは眉をひそめるも、すぐに思い当ったのか目を見開く。


「あそこって…まさかレハンのとこじゃないだろうね?」


「そうだ。彼の店さ。変わっていないなら、彼の条件に合うのではないかな。週で高給与だったと記憶している。仕事もシンプルだったはず」


 なにやら、彩にとって好条件そうな仕事があるらしい。思わず首を長くさせんと顔を出してしまったが、乗り気のヌメルヤに対しメイベッサが浮かない顔をしていて、つい正してしまう。


「あそこは普通に単純な仕事を与えてくれるところじゃないんだよ。あいつの荒すぎるやり方に何人辞めたと思ってるんだい」


 とんでもない、とメイベッサは案を突っぱねる。

 シンプルだけどただのシンプルであらず、雇い人は問題とどうにも不安さがある仕事のようだが、大丈夫なのかと彩は引き気味な気持ちでヌメルヤに目を向ける。

 ヌメルヤは相変わらずなんだ、と困った言い方ながら愉快そうに笑う。


「けれど、冒険者以外に条件に合うちょうど良い仕事はこれしかないと思うがね。サイ君の実力は冒険者クラスランクFにおとるかおとらずか分からないが、旅人でそれもアバザスの森での採取は良さそうだ。良質の薬草を三束持ってきたのだから」


 『アバザスの森』とは彩がこちらの世界に来た時に最初にいた森のこと。そこで適等ながら取った草が薬草であり、傷薬に適した質が良いものだったらしく、一束34Cで102Cも買ってくれたのだ。

 ブック・シーの知識から『ジヴォートノエ』の貨幣は硬貨だけで紙幣はない。硬貨は銅貨・銀貨・金貨の三種類で、それぞれC・S・G(Copper・Silver・Gold)と略されている。硬貨は7cmと地球の500円玉より大きいが、厚さは薄く形は円形で真ん中に穴がある。その穴に紐を通して散らばらないように連ねている。この世界ではそれを財布として携帯している。また、金額が多いと、それを袋に入れたりしている。

 どれくらいの価値かと言うと、地球の金銭に当てはめると、だいたい銅貨一枚で100円・銀貨一枚で1万・金貨一枚で100万という感じだろう。つまり、彩の所持金である102Cは1万200円というぐらいだろう。自分のお小遣いの二倍もある。

 大金だから大切にしないと、と彩は懐に仕舞い込んだ硬貨を握り締める。そんな思考している中、メイベッサとヌメルヤは案を出した仕事について口論としていた。難しい内容でつい現実逃避をしてしまっていた。

 自分ごとなのに傍観としながら、三人分の食器を片づけたりすると、当人を無視して話し合ってもしかたないので彩に一回やらせて判断をまかせるという結論になった。

 ヌメルヤはまったくとついていってなかった彩に言う。


「サイ君。一回ある店の雑用業務で働いてみないか。あそこはいつ辞めてかまわない店だから」


 そんな仕事紹介で大丈夫なのかな、と彩は不安になったが、とりあえず、やろうと頷いた。

 翌日、彩は働く場を手に入れるのだが、メイベッサが苦く浮かなさそうな顔をしていた理由がなにか身を持って知ることになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ