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ふゆの女王様のひみつ

その夜、ある おとこが 塔の(まえ)にやってきました。

おとこは、ひるまから ふゆの女王様が中で こごえているのではないかと、おもっていました。


まず、おとこは 門をたたいてみました。

ドンドン

「女王様ー。出てきてくださーい。出てこないと、おじゃましますよー」


シーン


やはり中からは、(おと)が きこえかません。女王様が出てこないので、おとこは 塔の門をひらきました。よかったことに 門のかぎは、かかってなかったのです。


門をひらくと、ヒューっと吹雪が塔の中に入りました。

おとこは、いそいで塔に入り、門をしめました。


塔には かべを ぐるぐるまわるような かいだんが ありました。

その かいだんをのぼれば、てっぺんのへや に入れそうです。

おとこは、そのかいだんを ぐるぐるのぼって いきました。


たかいたかい 塔を のぼり、おとこは やっと 女王様のへや の前に たどり つきました。

ドアをたたきます。

コンコン

「女王様。わたしは、国王様のおふれを 拝見(はいけん)して、(まい)ったものです。中に入ってよろしいですか?」

すると、中から声がしました。

「どーぞー」


おとこは、へんじが来るとは おもむてもいなかったので、とってもおどろきました。おどろいた いきおいで のぼってきた かいだんを ころげおちそうになるほど おどろきました。


おとこは、おちついてから

「しつれい します」

と、いって ドアをひらきました。

ドアを ひらくと、そこには たくさんの毛布(もうふ)に つつまれた ふゆの女王様と 毛布でちらかった へや が ありました。


ふゆの女王様はいいました。

「そとは、さむかったでしょう?そこの毛布をつかって いいわよ」

おとこがこたえます。

「いえ、女王様の前で そのようなかっこうにはなれません」

ふゆの女王様は、ちょっとおこったかおで いいました。

「そのような かっこうって、わたくしの かっこう のことをいっているの?さむいのだから しかたないでしょ!わたくしも あなたの前で、このような かっこうなのだから そなたも毛布にくるまりなさい」

おとこは、しぶしぶ ゆかにあった毛布にくるまりました。

「はい。くるまりました」

ふゆの女王は、そのようすに まんぞくして おとこにききました。

「さて、そなた。要件(ようけん)はなんでしたか?」

おとこは、すこし こまったようすでこたえました。

「さきほど、ドアの前でも言いましたが、王様のおふれで やってきました」

ふゆの女王は、ふしぎそうな かおで ききました。

「ほう。それで、そのおふれとは、どのようなものです?」

おとこは、それをきいておどろきました。

「もしかして、ふゆの女王様は、おふれをご存知(ぞんじ)ないのですか?」

ふゆの女王は、あたりまえの ようにこたえました。

()っているもなにも、わたくしは、この塔に ずっとくらして いたのですよ。そとのことは、なんにも知りません」

おとこは、また こまったようすになって、こたえました。

「そうでしたか。では、説明します。ふゆの女王様、そろそろ交替の時期であります。国のひとびとは、みんなさむさに ふるえ そろそろたべものも なくなりそうです。ですから、この塔から出てください」

ふゆの女王はいいました。

「いやです」

おとこはこえをおおきくして いいました。

「そんな!なぜですか?」

女王様は、くちをとんがらせていいました。

「そとはさむいです。出たくありません」

おとこは、またまた こまったようすでいいました。

「そとがさむいのは、ふゆの女王様が、この塔におられるからです。出れば、さむさも なくなっていきます」

ふゆの女王は、もっとくちをとんがらせていいました。

「そのことばに 何回(なんかい)だまされたことか。いいですか?わたくしは、さむいのが いやなのです。けっして この塔から出ません」

おとこは、あきれてしましました。でも おとこは、ここでなにもしないわけには いきません。

「ふゆの女王様なのに さむいのが きらい だなんて。では、どうすれば、塔から出てってくれますか?」

ふゆの女王は、すこしかんがえてから いいました。

「そうですね…… では、()の国につたわる『こたつ』というものを もってきて ください。あれがあれば、きっと わたくしも そとに出られるはず」

おとこは、かおを あかるくして ききました。

「『こたつ』で ございますね?それがあれば、かならず 出ていってくれますね?」

ふゆの女王も えがおで いいました。

「ええ。もちろん。ふゆの女王は、うそをつかないわ」

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