エピソード5 崩れた噓
数日後。
アランはルドルフォに電話をかけた。
ルドルフォ
「アラン様、何か分かりましたか」
「ええ、それで話の場を持ちたいのですが」
「分かりました。こちらで場所と時間が決まりましたら連絡します」
「僕の同行者を一人と、あと呼んでほしい人が何人かいます」
「どなたを?」
「それは……」
———
迎えた当日。
王宮の一角にある、客人を迎えるための小さな応接室。
大きな窓から庭園が見える。
中央にテーブル。
ベネデット陛下、アデリーナ、ジルベールが向かい側に座っている。
その後ろにルドルフォ。
そしてアランとウィルが入ってくる。
アラン
「お待たせしました」
そして写真をテーブルに置く。
「本物かどうかを僕の横にいる専門家の
ウィルに詳しく調べてもらいました」
「そしてこの写真について、分かったことがあります」
陛下
「それは、なんだね?」
アラン
「ジルベール公爵、この写真をこの日に
撮られたのは間違いないですか?」
公爵
「間違いない、以前婚約していた女性と
ピクニックへ行った時の最後の写真だ」
アラン
「最後?」
「ああ……このあと彼女は流行病で亡くなってしまったんだよ」
「私はすっかり落ち込んでしまい、一人でよく彼女との思い出の公園を歩いたものだ」
アデリーナ王女
「まぁ、可哀想に」
アデリーナ王女がジルベール公爵を
見つめながら、そっと手を重ねる。
公爵
「今はアデリーナの優しさに心から癒されているよ」
アランはふっと笑う。
「最後は最後だろうなぁ」
王女
「何ですって!あなた!失礼よ!」
公爵
「アデリーナ、人の気持ちを分からない者もいるんだよ」
アラン
「そうだな…人の気持ちは分からない
騙す気持ちも分からないな」
公爵の眉がピクリと動いた。
「……私が騙していると?」
アランがウィルに頷く。
ウィルは写真の鑑定結果を説明した。
写真そのものには加工された痕跡はない。
しかし、画像データに残された撮影日時と、写真の裏に記された日付が一致していないという。
さらに、その写真に記された日の前日は、近年では珍しいほどの高温を記録していた。
その影響で、この地域ではワインの保管にも問題が生じていた。
陛下
「そう言えば、そんな年があったな」
アラン
「それなのに、あの日にワインを持ってピクニックをしているのが気になってね」
公爵
「そんなことか……私の記憶違いだったようだな」
アランの口角が僅かに上がる。
「へぇー大切な婚約者との最後の写真を?記憶違い?」
ベネデット陛下とアデリーナは
交互に公爵とアランを見ている。
アラン
「それから、ネットにこの写真の女性を
探していますって投稿したら……」
アランはスマホをかざす。
「いました」
「公爵、彼女は亡くなってないですよ」
「しかも彼女は、貴方に頼まれて、そのピクニックに付き合ったと言ってます」
アデリーナの驚いた顔の横で
ジルベール公爵は怒りで顔を赤くし
ソファから立ち上がる。
「でっち上げだ!」
公爵がアランに掴みかかる。
ウィル
「アラン!!」
アランが笑う。
「でっち上げてんのはどっちだよ」
陛下
「ルドルフォ、警備員を呼べ」
アデリーナ
「お父様!そんな……」
しばらくして、警備員が入って来る。
ジルベール公爵に部屋から出るように促す。
アデリーナは泣き崩れている。
陛下
「ルドルフォ、悪いが娘を部屋へ連れて行ってくれないか?」
「かしこまりました」
静かな部屋に三人になる。
少しの沈黙。
陛下
「君たちに、なんとお礼を言っていいか……」
アランとウィルが顔を見合わせる。
「ひとつ、分からないことが」
陛下
「なんだね?」
「僕を推薦したのって誰です?」
「ルドルフォだ」
「君の噂を聞いたらしい」
アラン
「そうでしたか」
「では、失礼いたします」
陛下
「娘の心もいつか癒えていくだろう」
「そうですね」
二人は部屋から出るとまた顔を見合わせる。
「さっき俺、咄嗟にアランって呼び捨てしてしまった」
「別に気にしてない」
「しかし、本当にあの写真の女性がいたなんて…ネットの拡散って恐ろしいな」
アランの口角が少し上がる。
「……そうかもしれないな」
「ん??どういう意味だ」
「ウィルって疑い深いな……」
「はぁ?」
「この近くに美味いコーヒー専門店があるんだ、ウィル行かないか?」
ウィルが笑う。
「いいねー」
アランが笑う。
「決まりだな」
———
夕暮れの街を見下ろす高台。
ウィルは柵に寄りかかっていた。
いつの間にか、思い出に浸っていたらしい。
「……アラン」
ふと、口をついて出た名前。
「なんだよ……」
背後から声がした。
ウィルは振り返った。
「……!」
一瞬、言葉を失う。
「アラン!」
「生きてたのか!」
「良かったぁー!!」
アランは小さく笑った。
「どうしてここにいるのが分かったんだ?」
「お前は、落ち込むといつもここだからな」
ウィルも笑った。
「お前が死ななくて、本当に良かった」
「心配かけたな……」
ウィルは、改めてアランを見た。
「……どこにいたんだ?」
「旧離宮跡地」
「旧離宮?」
「あぁ。後で聞いたんだけど、
俺は音にのまれていたらしい」
「らしい? 誰から聞いたんだ?」
「兄貴が助けに来てくれたんだ」
「は?」
ウィルは目を丸くした。
「お前……兄貴いたのかよ?」
「あぁ」
「会ったことねぇーぞ?」
「七つも上だからな」
ウィルは呆れたように息を吐いた。
「……お前さ」
「何?」
「仮説より俺に場所!言っとけよ!」
アランは、わずかに口角を上げた。
エピソード5 完。
アラン•クロニクルI——写真の中の真実 終
お読みいただきありがとうございました。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
それでは、また次の事件で。
『アラン・クロニクル II』でお会いしましょう。




