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魔法使いのユメ─Ain Soph Aur─  作者: 神代
第一章
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Act.40『初めての仲間』

 アリエルが自室で着替えを済ませてエントランスに降りると、そこにアルトライトの姿はなく、辺りを見回して探してみると彼はエントランスの外へと移動していた。

 そしてアリエルは外へ向かう途中で、アルトライトの傍らに佇む見知らぬ二人の男女を見つけた。容姿はアリエルやアルトライトと変わらないような年頃の青年と少女だ。

 こちらの世界においてはアルトライトの次に出会う、同じ年頃の人物達。並びに、これから共に任務に励んでいくことになる仲間達である。

 そんな彼らとの初対面にアリエルは気を引き締めながら、ゆっくりとした足取りで彼らの元に向かった。

「お、お待たせしました……」

「ああ、これで全員揃ったな。こっちはもう互いに紹介が済んでいるから、君に二人を紹介するよ」

 アルトライトはそう言うと、アリエルと二人の中間に位置取った。

「彼の方が御神(みかみ)(つばさ)、そして彼女の方がメシエ・バーミリオンだ」

 アルトライトから紹介された二人は、アリエルを見やってそれぞれ黙ったまま軽く会釈した。

 一人はアルトライトと同じく、黒髪の青年だった。

 顔立ちと名前から察するに、おそらく日本人の血を引く者だろう。日本に住んでいたアリエルにとって、慣れ親しむ人種を見るだけでも好感を持てるのだが……不思議なことに、彼の肩には何やら白い小鳥が乗っていた。

(この人の使い魔……なのかな?)

 そしてもう一人は赤髪の少女だった。

 特務執行科の管理補佐を務めるプレアデス・バーミリオンの娘だと事前に紹介されていたこともあり、確かに彼女の面影が見て取れる。母親に似た姿勢の良い佇まいが、育ちの良さを物語っているようだ。

(仲良くしてほしいとは言われたけど……)

 社交的な性格ではないと自負しているアリエルは、果たしてこのチームメイト達と親睦を深められるのかどうか不安だった。

 取り敢えず不器用なりに当たって砕けてみるしかない。出来れば砕けたくはないのだが。

「で、ふたりとも。この娘がさっき説明した最後のチームメイト、アリエル・アイン・ウィスタリアだ」

「ア、アリエル・アイン・ウィスタリアです。どうぞよろしくお願いしますっ」

 アリエルは緊張で上擦った声を放ちながら、深々と一礼した。

 そんな彼女を見据える二人からは何も返事が返って来ず、何かやらかしてしまったのかと焦る。

 いや、別に何もおかしいところはなかった筈だ。アリエルがアウル・アインの子孫の一人だと知るのは、ごく一部の人間だけである。きっとアルトライトもその事実を知らされてはいないだろう。だからアインの名前を聞いても、誰も特に気に掛かることはないと思うが──

 頭の中であれこれと考えながらアリエルが恐る恐る顔を上げると、そこには何故か驚いた表情が二つ並んでいた。

「……え、えっと、どうかしまし……た?」

「いや……意外と普通の子だな、と思って」

 そう答えたのは赤髪の少女、メシエ・バーミリオンだった。

 何が意外なのだろうとアリエルが小首を傾げていると、その理由に思い当たったらしいアルトライトが代わりに言及した。

「多分、君があのイデアさんの弟子だと説明してあるから驚いたんだろう。彼の弟子は、俺の父を含めてみんな大物の魔導師として世に名を馳せているからな。そんな人物達と肩を並べる新しい弟子がどういう人物なのか、いろいろと想像を膨らませていたのさ」

「はあ、なるほど……なんか普通の子ですみません……」

 師匠のネームバリューについては昨日知らされたばかりなので、アリエルとしてはいまいち実感が掴めない。しかし二人の気持ちは分からなくもなかった。

 例えるなら、高級感満載のプレミアム肉まんと宣伝されていたので買ってみたら、普通の肉まんと大して変わらない味の品を食べた時の残念さに似ているのだろう。いま思い出すだけでもあれは腹立たしい記憶の一つだ。

「でもまあ、母が言っていた通りの子じゃなくて、私はほっとしたわ。改めまして、メシエ・バーミリオンよ。よろしくね、アリエル」

「よ、よろしくお願いします」

 メシエから差し出された手を握り、アリエルは彼女と握手を交わす。

 そんなメシエに続いて、もう一人の青年からも手が差し出されてきた。

「御神翼だ。……よろしく頼む」

「はい、よろしくお願いしますっ」

 彼とも握手を交わすアリエルだったが、その視線はついつい彼の肩にいる白い小鳥に奪われてしまう。

 いや小鳥とは言うが、それは鳥と呼ぶには少し疑問を覚えるような見た目をしていた。

 クチバシと翼があるので鳥として扱っているが、さながら饅頭にそれらと目が(そな)わっただけのような丸く珍妙なフォルムをしているのである。

 おそらく魔界の生物だとは思うのだが、胴体に当たるのは一体どの部分なのだろう──

「……こいつが気になるのか?」

「あ、えっと……まあ。その子、翼さんの使い魔ですか?」

「いや……別にそういう関係ではないのだが。主従と言うよりはパートナー……と言えばいいだろうか」

「なるほど、パートナーですか。ちなみにお名前はなんて言うんです?」

「……この状態では、俺は『ハチ』と呼んでいる」

「ほぉ、ハチちゃんですかー」

 アリエルが興味深そうに白い小鳥ことハチを見つめていると、ハチの方も何やらアリエルの顔をじっと見つめていた。

 するとハチはおもむろに翼を広げて羽ばたき、アリエルの頭の上へ一直線に飛び移った。そして何かを探すかのように、クチバシでアリエルの頭を(つつ)きながらぴょんぴょんと跳ね回る。

「わ、ちょ、なに、なんですかなんですか!?」

「……驚いたな。ハチが俺以外の人間に自分から触れるなんて初めてだぞ」

「触れると言うか突かれてますよねこれ!?」

「一心不乱に突かれてるわね……」

 次第に勢いを増していくハチの行動に、流石の翼も止めに入るが、何故か言うことを聞こうとしない。

「いた、痛い痛い痛い!? ぎゃあああああ、お助けぇえええええ!?」

 悲鳴を上げるアリエルと、ハチを止めようとする翼とメシエによって混乱していく状況を、アルトライトは乾いた笑みを浮かべて眺めていた。

 ──これからこの四人で無事にやって行けるだろうか?

 先程まで感じていた不安とは別の心配を懐きながら、アルトライトもハチを止めるべく彼らの輪の中へと入っていった。

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