表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/252

流し素麺と七夕祭り



その日 愛満達は、神社で開催される『七夕祭り』の準備を朝早くから忙しそうに準備していた。



「愛満、丈山達が七夕用の笹を持ってきてくれたでござるよ。

笹は前に話してた七夕飾り用の場所に立てると言ってたでござるから、それが終わったら昨日折り紙や色紙で作った『ちょうちん』や『投網』、『ふきながし』なんかをタリサ達と七夕飾りしてもいいでござるか?」


「うん。大丈夫だよ。あっ、そうだ。笹が倒れないようにしっかり立ててと僕が言ってたって丈山達に伝えてね。」


「了解したでござる!」


愛満と愛之助の2人が話していると、ねじり鉢巻姿の美樹と山背が2人の元へやって来て


「愛満、流し素麺の用の竹のコース完成したぜ。次は何か手伝う事あるか?」


「ワシも竹の箸と素麺用の竹カップ作り終わったのじゃ。」


自分の振り分けられた担当の仕事を終えた2人は、何か他に手伝える事はないかと聞いてくる。


「えっ!2人とも、もう終わったの?仕事が早いね。

えっと、そうだね。………なら次は香夢楼達が社務所で短冊用の墨をすってるから、良かったら手伝ってもらおうかなぁ。」


「香夢楼達の手伝いで社務所だなぁ。解った、任せとけ!

あっ、けどさぁ~愛満。墨をする手伝いが嫌だから聞いてるんじゃないんだぜ。

たださぁ~、なんで七夕の短冊用にわざわざ(すずり)で墨をするんだ?簡単にペンとかじゃ駄目なのか?

俺、あっちに居る時仕事先の美容院がやるプチ七夕イベントでは、お客さんの服や手が汚れないようにもあるけど。いつもペンで短冊に願い事書いてもらってたから、墨と七夕の関係性がイマイチ解んないんだよなぁ。」


「おっ、美樹もかのう!ワシも不思議に思ったのじゃよ。

わざわざ墨をすらんでも、ワシも愛用しておる筆ペンでも良いのではないかのうと思ったのじゃ。

それにレム達にわざわざお願いして、里芋の葉にたまった露を集めてもらっておったろう。あれもどうしてなのかのう?」


七夕の為にと愛満が香夢楼達やレム達にお願いしていた準備の意味が解らず。少々不思議に思っていた美樹と山背の2人が愛満へと質問する。


「あぁ、それはね。僕も婆ちゃんから習って詳しくは解らないんだけど。昨日山背も一緒に硯を洗って『硯洗い』をしたでしょう。」


「うむ。昨日美樹達が帰ってくる前に愛之助や光貴達と一緒に日頃使っておる硯を洗ったのう。」


「あれがね、『硯洗い』と言って。七夕の前日に行う行事で、手習いの道具を清めて日頃の労に報いる日なんだ。

それから里芋の葉にたまった露を集めてもらった訳は、僕の住んでた所の昔の人達は、里芋の葉にたまった露を『天の川のしずく』と考えられていたみたいでね。

清められて綺麗になった硯と『天の川のしずく』と考えてられていた里芋の葉の露を使って、墨をとき。

和紙の原料にもなる(かじ)の葉に和歌を書いて、字の上達などを願っていたそうなんだ。

それがしだいに梶の葉から七夕の歌にもある赤・青・黄・白・黒(紫)の『五色の短冊』に願い事を書くスタイルに変わったそうなんだよ。

だから僕も、婆ちゃんがしていてくれたよう。七夕前日に硯洗いをして、集めた里芋の葉の露で墨をとき。

五色の短冊に願い事を書いて、僕が楽しんだように朝倉村の子供や大人達も楽しめる。星に祈る七夕祭りをしょうと考えたんだ。」


愛満が自身が祖母に習った七夕の祝い方を話すと、話を聞いた美樹と山背が


「へぇ~七夕って、ただ天の川を眺めて笹に願い事を書いた短冊を結び。素麺食べる行事じゃなかったんだなぁ。知らなかったぜ。」


「ほぉー、実に良いのう~。それに愛満達が昔住んでた所では四季折々に寄り添った風流で、雅な祝い事をしておるのじゃなぁ。実に羨ましいのじゃ。」


感心した様子で、気持ち過ごしやすくなる夕方から開催される『七夕祭り』の準備を再開するのであった。



◇◇◇◇◇



「皆~!竹の箸と汁が入った竹カップは、持ったか~?」


「「「「「おう~~!!」」」」」


「そんじゃあ、ここに朝倉村第一回目の七夕祭りを開催するぜ!そして、今からおまちかねの『流し素麺』を始めるから、沢山とって食べてくれよな~!!」


すっかり村開催の司会がいたについた美樹の元気の良い声で、朝倉村第一回目の七夕祭りと流し素麺が始まり。



「うわゎゎ、難しい。兄ちゃん 素麺取れないよ。」


「貸してみい。よっと、ほら素麺取れたぞ。」


「やったー!兄ちゃん、ありがとう。………うん、うん。素麺美味しいねぇ!」


村の兄弟の微笑ましい場面があったり。その近くの流し素麺では村の仲良しチビッ子組が集まり。


「やったー!俺 一発で素麺取れたぜ!」


「ナユタ スゴい~!私も頑張るぞ!」


「うわっ!僕も取れた!……う~ん♪素麺美味しい~!!」


「よっ、と。おし!俺も素麺取れたぜ!」


「うわー!タナ、ちょっと見てみろよ。ミニトマトが流れてきたぜ。流し素麺て面白いなぁ~!」


「あっ!ねぇ、みんな。あっちにいなり寿司が置いてあるよ。食べに行こうよ。」


楽しそうに七夕祭りを満喫していたり。ある所では、お重いっぱいの『いなり寿司』を確保した人物が


「…ムシャムシャ……はぁ~、七夕祭り最高でやんす!

いろんな種類のいなり寿司がこんなにいっぱいあって、お腹いっぱい食べれるでやんすから!

あっ!そうでやんす。愛満から貰った短冊に、後で毎日美味しい『いなり寿司』を食べれるようにと願い事を書くでやんすかな!」


1人いなり寿司パーティーを満喫していたりした。



◇◇◇◇◇



こうして7月7日の1日限定の朝倉村第一回目の『七夕祭り』は、何のハプニングも無く。村人皆が楽しむ中、滞りなく過ぎていくのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ