和菓子『紫陽花』と暇をもて余す者達と和菓子教室
その日万次郎茶屋では梅雨のため。連日降り注ぐ雨を恨めしそうに茶屋窓から見詰める愛之助達が、かなり暇そうにダラダラしていた。
「はぁ~~~、今日も雨だ。いつになったら梅雨終わるんだろう。」
「あめ、やまにゃいね。」
「よく降る雨へけっ。ハァ~~これじゃあ、日課の苺の食べ歩きも出来ないへけっし、外で満足に遊べないへけっよ。」
「ハァ~~、花夜達元気でござるかなぁ~。こう雨が続くと、花夜が体調崩したりしてないかと心配でござるよ。
それに連日の雨続きで、右里おじさんの迷惑になってはいけないと思い。花夜の所に遊びに行きたいのをグッと我慢してるでござるし!
タクとルルナとも、この雨で満足に遊べなくて退屈でござるし!
それに光貴の言う通り。毎朝世話しているとは言え、村中に有る苺畑に沢山実る。あの拙者達が精魂込めて育てている苺達が、この長雨の影響で何かダメージ受けてないか等、本当に心配でござるし!
そもそもこの雨のせいで、最近苺忍者隊の活動が、なかなか満足に出来てないでござるよ、し!」
何やら『し!し!』と連発しながら、最後の方は『○し!』と言うのが楽しくなった様子の愛之助が話し。
「本当だよね。花夜達もだけどタクとルルナ元気かなぁ~。
ア~~ァ、久しぶりに苺畑から直取りした。生の苺をお腹いっぱい食べたい~~~!!!………………って、言ってもこの雨のなか、苺畑に取りに行くのは大変だしなぁ~。
…………………………ハァ~~~………それにしても本当に暇だねぇ。」
連日降り続く雨のせいで、まだまだ体が本調子ではない花夜やケンタウロス族のタク、妖精族のルルナ達などと遊べない事に加え。
苺忍者隊の日課(特典)、朝倉村に存在する苺畑を周り。好物の苺を食べ歩きする等々
苺忍者隊の活動等が満足に出来ない事等をついつい愚痴ってしまい。
「本当に暇へけっね。この前の雨の中カッパ着て遊ぶのも面白かったのは面白かったへけっが、カッパの中が蒸し暑かったへけっし。アレはアレで1回で飽きたへけっ。
そういって傘だと遊んでる間へけっね。手で持たなければいけないへけっから、邪魔になるへけっし。
ハァ~~~、雨の中の遊びを考えるのは難しいへけっ。」
「あぁ、この前のカッパね。あれは最悪だったね。
そもそも雨のなか、外で遊ぶと服が濡れて風邪引いたり。
ただでさえ雨で洗濯物が乾かないのに、洗濯物が増えるのは困るって母ちゃん達が言うから(怒るから)カッパ着て外で遊んだのにさぁ~!
なのになのに!服が雨で濡れなくて楽しかったのは楽しかったけど!!
いつの間にかカッパの中が蒸れて汗だくになっちゃて、結局お風呂に入ったり着替えたりしたんだよねぇ~!」
「本当でござるね。この前のカッパを着て、外で遊んだのはナイスアイデアだと思ったでござるが、カッパの中がいつしか蒸れてしまったでござるし。
その汗で髪が顔や首に張り付き。汗で濡れた服が合わさり。実に不愉快な気分になってしまったでござるよ!
ハァ~~、せっかく色違いのマ○メロちゃんでお揃いにしたでござるのに、実に残念だったでござるよ。」
つい2日前。カッパを着て雨の中遊んだ時の事を思い出し様子のタリサ達は、外で遊べない事等でストレスが溜まりに溜まった様子で
いつものプラス思考は何処へやら、ついつい愚痴ばかり溢してしまう。
「まぁ、けどアレはカッパが悪いのではなく。
蒸れ防止や通気性等もバッチリの高機能のカッパでござったが、いささか拙者達の運動量が上回ってしまったのが原因でござるし。
あんまりカッパだけを悪く言えないでござるから気を取り直し!この美味し過ぎるカルピスでも飲もうでござるよ!」
4人が最近の定位置でも有る。茶屋内の窓辺に4人並んで座り。雨足の様子をうかがいながら、大好きなカルピスをチビチビ飲みながらボッーーとしていると
愛満と山背の2人が、満開のピンクや青の紫陽花を生けた花瓶を持ち。茶屋内へと戻って来る。
「うわ~~綺麗でござるね。愛満、山背、その紫陽花どうしたでござるか?」
愛満達の持つ、綺麗な紫陽花が生けられた花瓶に気づいた愛之助が声をかけながら駆け寄る。
「本当だ!その花綺麗だね。紫陽花て言うの?」
「本当に綺麗へけっ。どこに咲いてたへけっか?」
「かあいいね♪」
愛之助の声で、愛満達が持つ紫陽花の花に気付いたタリサ達も口々に紫陽花の事を口にしながら、愛之助同様、愛満達の元へと駆け寄っ行く。
そんな愛之助達の姿を微笑ましそうに見詰めていた愛満は、4人の質問に答えながら茶屋内に有る飾り棚に、紫陽花が生けられた花瓶を飾り。
「本当に綺麗だよね。この紫陽花はね。山背のお城の裏に綺麗に咲いてたから、少し分けてもらって生けたんだ。
しかもアルカリ性なら赤紫色、酸性なら青色の紫陽花が咲くんだけど、うちの坪庭の土はアルカリ性と酸性の場所があるらしくて青色とピンクの紫陽花が咲いてたんだよ。何か不思議で面白いよね。」
ちょっとした紫陽花情報を交えながらタリサ達の問いに答え。愛満の回りをウロチョロしている愛之助達へと向き合う。
「へぇ~~、山背の城の裏に紫陽花が咲いていたでござるか!それは知らなかったでござるよ。
しかしピンクや紫、青色の紫陽花の花が咲くなんて、紫陽花の花とは、何だか得した気持ちにさせてくれる素晴らしい花でござるね♪」
「へぇ~紫陽花の花の色って土で変わるんだ。知らなかった!
けど、ただ綺麗なだけじゃなく面白い花でもあるだね。ふし~~ぎぃ~!」
「土で花の色が変わるなんてスゴいへけっ!ビックリへけっね!」
「マヤラはピンクのあじちゃいがちゅき!よしみちゅは?」
「そっか。マヤラピンク色の紫陽花の花が好きなんだね。
う~ん、そうだね。僕はどちらかと言うと実家に生えてた白色と言うか、淡いピンク色の紫陽花が好きだったかなぁ。
その紫陽花の花はね。僕が『母の日』に婆ちゃんと母さんにプレゼントして、実家の庭に植えられた紫陽花の花になるんだ。」
何やら愛満が実家の事を思い出して話をすると、マヤラと愛満の話を聞いていた愛之助達が
「拙者はでござるね、愛満!」
「僕はね、僕はね!」
「光貴はへけっね!」
自分達の好きな紫陽花の花の色を愛満に伝えようと嬉しそうに愛満にまとわり付き。
少々、自身が生けた紫陽花の花の飾る場所や花の位置にこだわっていた山背も加わり。
暫し間、愛之助達は紫陽花の花の話題で盛り上がり。
そうして、何やら作業途中だった愛満が台所の方に戻ると。愛之助達はまた、暇そうに雨足の様子を観察し始め。
「…ハァ~~暇だ。」
「……………ハァ~~~暇へけっ。」
「……暇でござる。」
「…ひまじゃね。」
「………………フゥ~~暇なのじゃ。」
山背も加わり。5人は大きなタメ息をつくのであった。
◇◇◇◇◇
その後、止まない雨やあまりの暇さにしびれを切らしたタリサが愛満に泣きつき。
「ねぇねぇ、愛満。僕達暇なんだけど何か面白い事ない?」
「そうだね。何か面白い事ね…………う~~ん。トランプやオセロで遊ばないの?」
「うん!トランプもオセロも折り紙も塗り絵も家の中で遊べる遊びは全部遊びすぎて飽きちゃったんだ。他に何かない?」
家の中で出来る遊びを遊び尽くし。本当に遊び飽きた様子のタリサが、実に困った様子で眉を八文字にして、更に愛満に問いかける。
「そうだね。何か他の遊びね。…………う~~ん…あっ!そうだ。なら今日のおやつ作りのお手伝いする?」
暫し間考え込んだ様子の愛満であったが、何やら閃いた様子で、今日のオヤツ作りを手伝ってもらう事を思いつき。
タリサ達にオヤツ作りのお手伝いするかと、少々半信半疑のなか問い掛けると
「おやつ作り!うん!するする!」
「僕もお手伝いするへけっ!」
「マヤラもおてちゅだいする!」
「拙者も手伝うでござるよ!」
「ワシもお手伝いするのじゃ!」
暇をもて余した4人と+1名がふたつ返事で大喜びする。
◇◇◇◇◇
「そうそう。白餡も黒餡も一口サイズに丸めてね。………マヤラ上手だね。手のひらを使ってコロコロと丸めるんだよ。」
「コロコロ?」
「うん。こうやってコロコロ、コロコロ♪」
「あい!コロコロ♪コロコロ♪」
色違いのマ○メロちゃんエプロンと三角帽を着用し。手洗いバッチリの5人が3時のおやつ作りのお手伝いならぬ。即席の和菓子教室が万次郎茶屋で開催されていた。
そうして愛之助や山背、タリサ達チビッ子組も丸める。愛満お手製の白餡と黒餡の餡子玉の大きさを説明しながら微妙な大きさの違いは目をつぶりつつ。
愛満がマヤラを手伝い餡子を丸めていた所。隣で餡子を丸めているタリサと光貴が
「愛満、このくらいの大きさで大丈夫?」
「僕の餡子の大きさもこれぐらいでいいへけっか?」
自身が丸めた餡子を愛満に見せながら、少し心配そうに質問する。
「どれどれ、うん。タリサも光貴も上手に丸めているね。その大きさで大丈夫だよ。」
「本当に!ヤッター!よ~~し、残りも綺麗に丸めるぞ!」
「僕も頑張るへけっ!」
愛満に誉められ。ますますヤル気が出た様子の2人は残りの餡子を元気良くコロコロと丸め出す。
するとタリサ達の前の席で作業していた愛之助と山背が
「愛満、餡子丸め終わったでござるよ。次は何をしたらいいでござるか?」
「ワシも丸め終わったのじゃ。次は何をするのかのう~。」
分担された自分達の分の餡子を丸め終え。マヤラの手伝いをしている愛満に声をかける。
「2人共もう丸め終わったの!早いね。
そっか、次ね。う~ん…………ならさっき作って冷やし固めてる錦玉が固まってるはずだから、型から出して5ミリ角に切っておいてくれる?
あっ、けど包丁使う作業か………………う~ん、包丁使う作業だけど2人とも大丈夫?出来る?」
包丁を使う作業の為。ついつい心配症の愛満が心配、不安そうに愛之助達に声をかけるのだが
「ご、5ミリ角に切る!?せ、拙者が切っていいでござるか!?
了解したでござる!!拙者、この任務立派にやりとげてみせるでござるよ!任せるでござる!」
「5ミリ角に切るのじゃな!ワシに任せるのじゃ!綺麗に切ってみせるのじゃ!!」
妙な気合いが入り、ヤル気みなぎる2人には届かず。
「あ、ありがとう。なら2人に任せるけど包丁で怪我しないように切るんだよ。気をつけてね。切る時は包丁を持ってない方の手は猫の手だよ。いい?本当にいい?」
包丁を使う作業なので怪我しないかなど愛満が心配し、改めて念入りに話す中。
またもやヤル気満々の様子の2人の耳には全く届かず。
テキパキと使用した用具等を片付けながら、粉寒天でできた色とりどりの錦玉を切る準備をしだす愛之助と山背なのであった。
◇◇◇◇◇
そして全ての白餡と黒餡を丸め終わったタリサ達や、錦玉を5ミリ角に見事に怪我もなく切り終わった愛之助達は、次の作業に移り。
「まず最初にタリサ、光貴、マヤラ、餡子を綺麗に丸めてくれてありがとう。愛之助と山背も錦玉を綺麗に切ってくれてありがとうね。
それじゃあ次の作業は水と粉寒天、砂糖、水飴、食紅で作った錦玉を使って、丸めた餡子玉の回りにつけて紫陽花を完成させるよ。
白餡には薄青色や青色の錦玉をつけたら青系の紫陽花になるよ。逆に黒餡にはピンク、薄紫色の錦玉をつけたら赤やピンク系の紫陽花になって綺麗だよ。
他にも様々な色の錦玉を混ぜて餡玉につけても綺麗だから、いろいろ考えて作ってみたら良いよ。」
愛満がお礼や『紫陽花』の作り方を説明をするなか
照れくさそうにハニカム5人は、自身が丸めた餡子玉に思い思いの色とりどりの錦玉をつけ始め。無事、和菓子『紫陽花』を完成させた。
◇◇◇◇◇
そうして、暇をもて余した4人(+1名)のための即席和菓子教室は、愛之助達大満足のなか無事終わった。
◆◆おまけ◆◆
【自分が作った和菓子の紫陽花を食べて一言】
「う~~~ん、美味しい~!
あっ!そうだ。愛満、沢山作ったから父さんと母さんに持って帰ってあげていい?」
「おいちいね♪」
「本当に美味しいへけっ!見た目も茶屋に飾ってある花の紫陽花見たいで、本当に綺麗で可愛いへけっ♪」
「うんうん。和菓子特有の上品な甘さがあとひく美味しさでござるね。お茶と良く合ってるでござるよ♪……………………ハァ~~本当、美味でござる♪」
「うん!旨いのじゃ!さすがワシなのじゃ。これはまさに天才なのじゃ。
…………モグモグ……モグモグ…………うんうん。やはり、これはこれは美味でございましゅ~るなのじゃ!!」
若干1名自画自賛しながら、皆で美味しく3時のオヤツを堪能する。
《和菓子『紫陽花』と暇をもて余す者達の和菓子教室、の登場人物》
・愛之助、タリサ、マヤラ、光貴=今回、何やら連日降り注ぐ雨のため、暇をもて余しているご様子
・山背=今回、自慢の自宅裏の紫陽花を茶屋へと振る舞う
・愛満=今回も弟達の為に知恵を絞るご様子




